これも学生時代にサークルで先輩(これまでとは別の人)から配布された、英国ロックバンド「ファミリー」についてのレジュメの書き起こし。
先輩の持っていたFamilyのアルバムを当時テープにダビングして聴いた記憶がある。アップルミュージックで聴き返してみると、やっぱり、いい。
Family 大げさな仕掛けとイギリス的美しさの同居
結成時。左から John "Charlie" Whitney (g), Jim King (sax, vo, harmonica), Rob Townsend (ds), Ric Grech (b, vo, violin), Roger Chapman (vo)
その歴史 1967~1973
ブリティッシュ・ロックの流れの上で決して無視することのできないFamilyの特集をお届けするにあたって、まず初めにこのバンドのメンバー・チェンジの回数の多さを特徴として挙げねばならない。
(メンバーチェンジに関しては後述のファミリー系統図参照)
その中にはかなり一般的知名度の高い人物もいるが、そんなことは関係なく重要なミュージシャンがこのバンドを出入りしている。簡単に歴史を振り返ってみよう。
1967年に「どローカルバンド」2つが合体してファミリー結成。そして翌1968年にデビュー・アルバム「Music in a Doll's House」発表。これは元トラフィックのDave Masonプロデュースによるもので、過剰なストリングス導入が不気味なRoger Chapmanのボーカルと対照をなし成功しているかのように思えるが実はダサい。
結成時のメンバーはほかにJohn "Charlie" Whitney(g)、Rob Townsend(ds)――チャップマンを含む以上3人は解散までは不動である――Jim King(sax)、Ric Grech(b)
基本的にファミリーのメンバー・チェンジは、ベーシストと変則的な楽器の移り変わりである。皮肉にも初のキーボーディストTony Ashton加入後解散してしまった。
1969年にセカンド「Family Entertainment」発表。初のアメリカ・ツアーを計画するが、リッチ・グレッチがBlind Faithという「スーパー」バンドに加入しようという淡い夢を持ってしまったために脱退。いいベーシストなのに目先のうんたらに目がくらんでしまい残念だった。彼はBlind Faith解散後行方不明。まだどっかのクラブで演奏してるという。(補注:1990年に脳内出血のため死去、享年43歳。)
彼の後任のベーシストはヴァイオリンも弾けるJohn Weider(元Eric Burdon's Animals)。同年サックスのJim Kingも脱退。存続危ういところに元Blossom ToesのPoli Palmer(vibraphone,key)が加入。
このメンバーで1970年1月にサード「A Song for Me」、10月に片面スタジオ片面ライブの「Anyway」を発表する。この頃からFamilyのレコードは変形ジャケットで発売されるようになる。ちなみに「Anyway」はビニール袋(半透明)にジャケットが入っているのがオリジナル盤。
5枚目は初期ベスト盤「Old Songs, New Songs」。これはCD化からもれたし私も持ってないので詳細は不明。しかしこのベスト盤がかなり売れたらしく、この頃から人気が出始めたようだ。
1971年6月にJohn Weiderが抜け、Mogal Thrashというバンドにいた John Wetton(b)が参加。
10月に最高傑作といってもよい「Fearless」を発表する。ジョン・ウェットンの濃いベースとコーラスが冴えている(彼も後にUKなどという愚にもつかぬ失態を演じることになるが)。
次の7枚目のアルバム「Bandstand」は「バーレスク」のシングル・ヒットも生み、非常に好調なセールスを記録する。しかし次第にバンドはファンキーなリズムを多用するようになり、元々の持ち味であったメロディーラインの良さと地道なアレンジを捨て、単調な曲作りしかせぬままリズムを強調する方向へ行ってしまう(思うにジョン・ウェットンがこれに一役買っているのかも)。
1972年9月、後ろ足で砂をかけるような形でウェットンが脱退し、キング・クリムゾンに加入。後任のベーシストは Blossom Toes、Stud を経た Jim Cregan。
10月にはPoli Palmerという唯一の良心も抜け、元 Ashton, Gardner and DykeのTony Ashtonが参加し、発足当初と比べてバンドの音はガラリと変わってくる。
1973年にラストアルバム「It's Only a Movie」を発表し、同年10月ファミリー解散…
のちのメンバーの足取りと雑言
ドラムスのRob Townsendは Medicine Head というバンドへ、Jim Creganは Steve Harley&Cockney Rebel へと移る。
中心の Roger ChapmanとCharlie Whitney はデュオで「Streetwalkers」というアルバムを発表後、そのアルバム名をバンド名としてストリートウォーカーズを結成。元ジェフ・ベック・グループのボブ・ランチなどを擁したがこのバンドも1977年に解散。
Roger Chapmanはその後何枚かソロ・アルバムを出しているが頭はすっかりハゲていて淋しい。でもブリティッシュ・ロック史上最も暑苦しいボーカルといっても過言ではない彼の存在を私は高く評価したい。今、この世の中に欠けているのは暑苦しいボーカルである。「さわやかでちょっぴりハスキー」なんてクソくらえだ。
FAMILYのアルバム
Music in a Doll's House 1968
Roger Chapman(vo), John "Charlie" Whitney(g), Rob Townsend(ds), Jim King(sax), Ric Grech(b) の5人によって68年に結成された Family のデビュー・アルバムが「Music in a Doll's House」である。
内容的にはかなりポップで、ストリングスの導入のために音の厚いつくりになっている。サイケデリック・ムーヴメントの影響も少なからずあるのであろうが、やはりDave Masonのプロデュースというのがこのアルバムの方向性の決定的な要因なのではないだろうか。
その後のファミリーを知っている者にとっては、ちょっとつらいアルバムである。
Family Entertainment 1969
前作と同じメンバーでレコーディングされたセカンドアルバムは、前作にみられる音楽性をまだ引き摺っているとはいえ、サード以降の路線の萌芽的な作品も収録されているという点で、過渡的な作品といえるだろう。
ロジャー・チャップマンのボーカルが本領発揮とまではいかないが、かなりテンションを̝高めてくる過程がそこにはみられると思う。
A Song for Me 1970
Jim King(sax)と Ric Grech(b) が脱退し、かわりにJohn Weider(b)とJohn Palmer(vibe,piano,flute)が新しく加入して、レコーディングされたのが本作である。ベースがかわったせいか、音がだいぶ軽くなったような印象をうけるけれども、アレンジでかなり凝っており、ジョン・パーマーがあちこちで活躍している。彼のフルートはそんなにうまくないが、味があってよろしい。
Anyway 1970
A面がロンドンの Fairfield Hallsでのライブ、B面がスタジオ録音になっている。「Anyway」から「Bandstand」に至る時期がFamilyの全盛期だと、ぼくは思っているので、皆さん聞きなさい!(解説になってなくてゴメンね)
Fearless 1971
Bandstand 1972
John Weiderが抜けて、John Wettonが参加しているのがこの2作である。強力なベースとを得て作られたこれらの作品では、ブルースやファンクにファミリー独特の解釈が施されており、他のバンドでは聴くことのできない一つの完成された世界を表現しているという点で、「Fearless」と「Bandstand」をファミリーの最高傑作と評して間違いはないと思う。
また、「Bandstand」からシングル・カットされた「Burlesque」は大ヒットしたそうだ。
It's Only a Movie 1973
ジョン・ウェットンとジョン・パーマーが脱退した後、Jim Cregan(g)とTony Ashton(syn)が加入して制作されたファミリーのラストアルバム。
全編通してトニー・アシュトンのキーボードが耳に着くのが気にかかるけれども、曲としてはなかなか良いものもないことはない。とくに「Check Out」は、何の変哲もないストレートなFunk Rockという気もするが、個人的には非常に好きな曲のうちのひとつである。
ファミリーのアルバムとしては、他にベストアルバム「Old Songs New Songs」と、BBCのジョン・ピール・セッションのシリーズで出されたものもあって、3曲収録されているが、まあまあの出来である。特に「Check Out」はオリジナル・アルバムのバージョンより数段かっこよい。