INSTANT KARMA

We All Shine On

たましいの声

前回引用した、『マカロニほうれん荘』の作者鴨川つばめ氏のインタビューには、続きがある。

「スピリチュアルな体験」いうのは、前世が王女さまだったとかイルカだったとか聞いて嬉しがることではなく、こういうことではないだろうか。

ある日、もうジタバタするのやめよう、と思ったんです。そしたら、暗い池の中を横になったままブクブク沈んでいくような感覚がありましてね。そのうちフツと背中が底に着いたんです。ああ、これがドン底ってやつかと思った時、生まれて初めて自分の魂の声を聞いたんです。いままでさんざん苦しんできた人だから、もうこれ以上苦しまなくていいよって。全身を包み込む、ほんとに優しい声だった。それでやっとフトンを離れることができたんです。

 いまの状態に戻るまで10年かかりました。カネに困れば皿洗いもやったし、ソープのボーイもやりましたよ。

不思議なことに、この10年間は酒井先生のことをすっかり忘れてたんです。今年になって突然思い出した。意外でしたね。こんなに影響を受けた人のことをオレは忘れてたのかって。それと同時にマンガに対する愛情も戻ってきたような気がしてね。

 今は、作品を準備中です。ギャグマンガ。僕は昔から人が笑ってる顔を描くのが好きだったんですよ。もう堕落したマンガ界を・・・、なんていう使命感はありません。ただ、酒井先生の自称最後の弟子として、先生に対して恥ずかしくないマンガを描きたい。その思いだけですね。

 

結果的に、つばめ氏はまだ完全に戻ってきてはいない。でも、踏みとどまれたということは本当に魂の声を聞いたのだろう。