INSTANT KARMA

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あまちゃん

あまちゃん」はクドカン脚本ということで普段はNHKの朝ドラを見ない層まで引きこんでこれまでのところかなりの話題をさらっている。

これまでは、岩手の自然をバックに年上の人々に囲まれて暮らすエピソードだったので、年配(60歳より上くらい)の視聴者の抵抗感も限られたものだったろうが、今週から、アキが東京でアイドルを目指すという「東京編」が始まり、これはますます本来のクドカン・ワールド寄りになって来ているので、年配の視聴者が置いてけぼりになるのではないかという懸念の声もあるようだ。

しかもアキの加入した「アメ横」とか「GMT47」というのが、あからさまなAKB48のパ*リのために、普段からAKBを快く思わない層からの反発も予想されるところである。

まあそんな制作サイドの心配は自分にはどうでもいいことで、最終的には確実にこのドラマは主役の能年玲奈のための作品だったということになるだろう。

元々東京ではパッとしない存在で父母の仲も険悪だったアキという少女が、最悪の家庭環境と灰色の学校生活から抜け出し、三陸で海女として生き生きとした姿を取り戻すという前半のストーリー(のさらに前半部分)は、時にこちらが気恥ずかしくなるクドカン的なテイストにもかかわらず、やはり出色の出来だったと思う。

アキはいろんな意味で能年玲奈本人にとってのハマリ役である。

東北訛りが似合う純朴な田舎少女然としたアキが、実は東京育ちでネガティブな内面を抱えているという設定は、子供時代をそのまま引きずっているような純粋そのものの瞳を持つ兵庫県の田舎町に育った能年玲奈という少女が、実は都会的な繊細さを抱えながらどちらかというと暗い側面を心の中に隠し持っているというドラマ外のストーリーともシンクロする。

アキは人間の悪に気づかないほど純粋な人間でもなければ人間の善を信じることのできるほど単純な少女でもない。ドラマの中でも視聴者を不快にさせない配慮をもってそこがうまく描かれている。

能年玲奈はこの作品でコメディエンヌとしての才能がクローズアップされるだろうが、本質的にシリアスな役が似合う女優だと思う。これまでにないタイプになりそうな気がする。