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Mayte Garcia回想録(9)

2016年1月、マイテは風の噂に、プリンスの具合がよくないと聞いた。心配する周囲の人々を遠ざけているとも聞いた。

マイテは、共通の友人であるニコラス・ランディーを通して、彼の様子を直接見に行ってもいいか、そしてジーアを連れて行ってもいいかどうかを訊いてみた。

ランディーは、噂は噂にすぎないこと、プリンスは元気なのでわざわざミネソタまで来るには及ばないこと、心配しているような薬は一切使っていないことを伝えてきた。

急いで訪ねる必要もない気がした。幼いジーアのことを考えると、ミネソタの寒い冬の中を連れて行くのもどうかと思った。

「たぶん今度の夏、ジーアの学校が休みになったときにでも」とマイテは言った。

その後、マイテがネットオークションに出品していたプリンス関係の物のことで、彼の代理人弁護士から連絡があった。

それはマイテが離婚の時に譲り受けたスペインの家にあったもので、温度調節された衣装室に大量に保管されていたプリンスの衣装だった。それをどうしたらいいかとマイテからプリンスに連絡して訊ねても、一向に返事がなかった。離婚条件の中には、スペインの家とその中にあるもの一切はマイテに帰属するとあったので、マイテが処分してよいはずのものではあったし、保管するだけでもコストが馬鹿にならないこともあって、ネットオークションで売りに出したものであったが、この行為については一部のプリンスのファンから非難の対象になっていた。

プリンスの弁護士は、買い取りたいものがあるかもしれないので、リストを送ってほしいと言った。マイテはプリンスの具合はどうかと尋ねた。元気だとの答えだった。直接話がしたいと言ったが断られた。

その数週間後に、プリンスの元恋人ヴァニティが死んだ。彼の悲しみを想い、会いに行きたいと思ったが、弁護士の口調からはプリンスが怒っているような印象を受けたので、「夏まで待とう」と自分に言い聞かせた。「ジーアを彼に会わせよう」と思った。追い返されることはないだろうし、彼がジーアを見て微笑まないなんてことはあり得なかった。

4月にコンサートをキャンセルし、延期されたコンサートを終えた後で仮死状態になって緊急搬送されたというニュースを聞いた。薬物中毒だとか、エイズだという噂もあった。精神的に参っているという話もあった。

マイテはマニュエラに連絡を取った。彼女は、脱水症状だと言われたといった。でもそれは信じられなかった。二人とも、プリンスが異常なほど水を飲む人であることを知っていたから。 マイテは真実が隠されていると感じ、不安になった。しかしプリンスという存在は閉ざされたサークルに取り囲まれていて、その壁を突き抜けることがいかに困難であるかは、かつてその内部にいたマイテが誰よりもよく知っていた。

ペイズリー・パークでパーティーがあるというフェイスブックに、マイテは「いいね!」を押した。それを見てプリンスが連絡を取ってくれるのではないかとの一縷の望みもあった。だが連絡は来なかった。 その六日後、プリンスは死んだ。

※プリンスの亡くなる前の状況については 以下の記事を参照されたし