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ちょっとほかに読むものがたくさんあって間隔があいたが小島信夫「小説作法」(中公文庫、2023年4月)のつづきを電車の中で読んでいた。

ドストエフスキーの「悪霊」について語っている部分は面白く読んだが、自分があまり関心のない話題(ドガや戯曲やカフカや)についてはつい読み飛ばしてしまう。

というのも小島信夫の語りというのはたいへんに回りくどくて、何がいいたいのか話を聞いていても(文章を読んでいても)さっぱり合点がいかず、面と向かって聞かされていると「いいから要点と結論を言ってくれ」と怒鳴りそうになって来るからだ。

とりわけ「私の最終講義」という副題がついた「小説とは何か」という講義の中で「チャリング・クロス街84番地」という本について説明しているくだりなど、書評系ユーチューバーがこんな説明をしたら冒頭の1分で視聴を停止されるだろうというくらい退屈でまわりくどい。

しかし、小島信夫にとっては、この要領を得ない、要点が定まらず結論を出そうとしないスタイルこそが小説の醍醐味なのであって、小説というものの面白さはそこにこそあるのだとでも言いたげなのである。

そして、そういうまわりくどい文章の中に、他の本にはない凄い洞察が時折出てくるから油断ならないのだ。

この本で言えば、「背中から見る」こと(254~257頁)についての箇所と「他者の声」の箇所(311~312頁)。

これについて、それこそ全文を引用しながらここに書いてみたいのだが、PCの調子が悪く一文字書くたびにフリーズしてしまうので今日はこれが限界。