INSTANT KARMA

We All Shine On

花魁

「若くて女だからイヤだなって思う事は、アイドルっぽい仕事がたまにくることですかね。以前イメージDVDのオファーがきて、『芸人がこんなことをやるのは、逆に面白いかな』って挑戦したんだけど…やってプラスになったことはなかった。美人だって言われるのはイヤじゃないけど、芸風と全然違うことをやらされるのは、もう懲り懲りです」 (Flash 2006年7月4日号)

昨夜の『ロンドンハーツ』では、女芸人をメイクで美人に変身させるという企画をやっていて、鳥居みゆきも“緊急参戦”していた。 「美人に変身」もなにも、鳥居みゆきはもとから美人で、“笑い”にとってはマイナスのこの要素をいかにプラスに転化させるかにさんざん苦労してきた芸人である。 企画を成立させるためには、思い切り崩すか、さらに麗しくするかのどちらかになるわけだが、番組は後者を選んだ。というより、その選択肢しかありえなかったといってよいだろう。“美”と“笑い”は相反する宿命にあるのである。 結果として撮られたのは、「男装の麗人」と「妖艶な花魁」の2パターンで、長澤まさみの『summertime blue』のカメラマンでもある斎藤清貴氏による写真は、いずれもよく撮れていた。 鳥居みゆきは、「まな板の鯉」状態で撮影に臨み、スタジオではひな壇に座りながら、こういう企画で女芸人に要求される役割を過不足なくこなしていた。 しかし、「ひな壇で女芸人に要求される役割を過不足なくこなす鳥居みゆき」をテレビで見ているのは、なんとも居心地の悪いものだ。もちろん、悪い意味で。

「そうなんですよ。一番いい時期にね、辞めてやろうかなと。一番これはもうテレビでハマるなみたいな、一番本当にいい時期にブチこわしてやりたいんです。まだまだ先かもしれないし、読み間違えてるのかもしれないし、永遠に訪れないかもしれない。小島(よしお)は正月だったね。小島は正月にいなくなるべきだった。けど、二回来る人もいるでしょ? それをね、違う、一回でここだって思った時にね、辞めようと思ってもみんなやっぱりちょっと遅れるね、絶対。うん、ちょっと遅れる。」(クイック・ジャパンVol.77, p157)

僕が今の鳥居みゆきに期待しているのは、すべてをぶち壊す瞬間のカタルシス。ただこれだけだ。先日のハイタッチでの暴発ではその片鱗が見られた。 鳥居の中でマグマのように渦巻いている芸人魂が、マネージャーにも手なづけられないほど臨界点に達したとき、どんな形で爆発するのか、僕はそれだけを固唾を飲んで見守っている。