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あたたかい水の出るところ

能年玲奈一推しの作家木地雅映子の小説『氷の海のガレオン/オルタ 』(ポプラ文庫ピュアフル)と『あたたかい水の出るところ』を読んだ。

『氷の海のガレオン』という小説は、今の社会からはみ出してしまう個性を持った人たちがどうやって世界と関わることができるか、という問題意識を背景にしつつ、過度に深刻になることなく、丁寧に人間の心の襞を描いた作品。……といってもこんな無骨な説明では何も言ったことにならない。とてもいい作品だと思った。能年玲奈のブログの文章にも通じるものがあるような気がした。

『オルタ』は、今は「アスペルガー症候群」という名前でラベリングされる子どもたちが学校という制度に適応することの困難さを母親の目線で描いた、割とへヴィーな作品。小説と呼べるほどのストーリーがあるわけではなく、明らかに大人向けの内容だ。なんでこれがティーン向け小説に分類されているのだろう。

『あたたかい水の出るところ』は、2012年の書き下ろし作品で、上記の初期作品よりもはるかにエンターテイメント寄りになっている。ストーリーも明快でとても読みやすい。とはいえ、お気楽そうな文体を用いて描かれている作品世界は実際にはお気楽なものには程遠い。主人公の女の子が頭の中で能年玲奈のイメージに重なった。「あまちゃん」の天野秋と通じる能天気な部分もあり、彼女の主演で映像化されるのを待っているかのような作品だと思った。