以下ネタバレあり
子どもたちが見たがるので、過去何度もジブリ映画には足を運んでいるが、そのたびに「う〜ん、これは・・・」という微妙な感想が続いている。
で、今回の『風立ちぬ』についても、やはり
「う〜ん、これは・・・」
「な〜んか、違う」
というびみょーな感覚だった。
なるべく予備知識を入れない状態で見た。
見た直後、感想は「特になし」としか言いようがない気分だった。
一般のレビューを見ても、やはり賛否両論のようだ。
まず、いつものことながら、物語の筋道がよく分からない。いや、今回は主人公堀越二郎の生涯を描くという大まかなストーリーはあるのだが、肝心な所が堀越の夢のシュールな描写で誤魔化されている感じがする。ちなみに、堀越二郎という人物はゼロ戦の設計者堀越氏と小説『風立ちぬ』の作者堀辰雄という二人の実在の人物をミックスさせた、架空の人物(?)である。実話とフィクションを悪い意味で曖昧に描いているようなこの処理にも正直違和感がある。
堀越の夢の中にイタリアの飛行機エンジニア(主人公の憧れの人物?)が繰り返し登場し、「日本の若者」である主人公にいろいろとアドバイスをくれたりするのだが、彼の言っていることがいまいちピンと来ない。
一番違和感があるのは、堀越は結果的に日本軍の戦闘機の開発に従事させられ、彼の開発した零戦が第二次大戦で玉砕攻撃に使われるという歴史があるわけだが、そこをラストシーンのイタリア技術者との対話の中でなんだかムニャムニャと言及して済ませたところ。
この程度の取り上げ方で済む問題なのかという違和感。この映画にメッセージがあるとするならここは核心部分にあたるはずなのだが、意外にあっさりと処理したなという感じ。
前半に関東大震災の描写があり、これが非常に迫力があって生々しい。311の後でこの描写がエンターテイメント映画の中でなされることに対する違和感。
堀越の妻との恋愛・結婚、そして妻の結核による死(暗示されるに留まる)という物語の重要な一部はそれなりによく描かれていたと思う。
ただこの部分は堀越二郎ではなく完全に堀辰雄の話なので、映画全体のバランスの中では不自然に浮いたストーリーになっている気がしないでもない。
前に『おおかみこどもの雨と雪』を見たときにも感じたが、エンターテイメントとしての軸がぶれているんじゃないだろうか。
カルト映画ならまだしも、全国の子どもの見る王道たる作品(ジブリ作品というブランドは今やそういう価値を付加されている)としてのクオリティは満たしていない気がする。ちょっと作り手のエゴがはみ出過ぎではないか。
「特になし」という感想を無理矢理言葉にするとこんな感じ。