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ここは退屈迎えに来て

何か目先の変わったものが読みたいと思い、たまたま目についたここは退屈迎えに来てという変わったタイトルの本を買って帰った。

読み始めると、面白くて、夜更けまでかけて一気に読んでしまった。 1980年生まれの作者が、地方都市出身の同世代の女性の内面外面の生活を、きびきびした文体でリアルに切り取っている。女性心理についてまったく洞察力のない自分には、とても興味深い描写の連続だった。 逆に、男の目線からも、似たような物語が書けるのではないかと思った。しかしその作品は、この見事な『ここは退屈迎えに来て』のような傑作に並ぶものになるとはどうしても思えない。 オムニバス短編小説の形式になっているので、登場人物を現実の女優に見立てて色々と想像すると楽しい。

そんなことを考えていると、もう一つの作品のことが思い浮かんだ。 この小説と同じ年に映画化された桐島、部活やめるってよだ。 タイトルの秀逸性という意味では『ここは退屈迎えに来て』に引けを取らないし、映画自体もなかなかの傑作だった。 橋本愛松岡茉優が、いい演技を見せていた。

あり余る時間を持て余しているであろう能年玲奈という女優に、この『ここは退屈迎えに来て』という小説を勧めてみたいな、とふと思った。 読書家の彼女は、あるいはもう読んでいるかもしれないし、そのタイトルはもしかしたら彼女自身の今の心境とリエゾンするかもしれないけれど。 いい青春小説を読んだ。