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AKBという無我表現の終焉

少々大げさなタイトルになったが、少し気になる記事があったので。

(以下、日刊スポーツ記事より引用。下線部は引用者による)

AKB48高橋みなみ(23)が8日、AKB48からの卒業を発表した。東京・秋葉原のAKB48劇場で行われた9周年記念特別公演に出演し、10周年記念日の来年12月8日をめどにグループから去ることを報告した。48グループ総監督の後継者には、横山由依(22)を指名。公演後、日刊スポーツの独占取材に応じ、危機感のないメンバーに活を入れるための決断だったことを明かした。

 卒業表明から30分後。高橋はスッキリした表情で、思いの丈を語った。「前田敦子の卒業が決まったときから、1期生全員を見送って10年をメドに卒業したいなと考えてました。小嶋陽菜より先にとは思ってませんでした」。

 9周年公演での発表は、秋元康総合プロデューサーからの提案だった。10月末、2回目の2人きりでの会食。突然、「卒業どうする?」と切り出された。驚きながら「10年をメドに」と答えると「じゃあ(発表は)12月8日だな」と言われた。「あと1カ月少しでしたけど『分かりました』と即答した自分がいました。秋元さんが『ここだ』と思ったら、そこなんです。今までも、その船に乗ってきましたから」。師弟のあうんの呼吸で決まった

 グループのために個人を犠牲にする総監督を横山由依に託すことに当初、大反対だった。「かわいい後輩につらい役目は負わせられない。絶対に私で終わらせます。昔の私のように、勝手に引っ張る子が出てくるまでは、みんなで頑張れば良い」。だが、秋元氏に「そんな時間は今のAKBにはない。先頭を切れる子がいないと、このグループはまとまらない」と諭された。加えて「横山本人のチャンスにもなる」とも言われて、最後は号泣しながら受け入れた

「同期の小嶋(陽菜)と峯岸(みなみ)よりも先に、大阪行きの新幹線の車中で横山に打ち明けました。1年かけてバトンタッチするつもりです」。

 リーダーゆえに最もグループの現状は分かっていた。「これまでも大島優子とともにAKB48イズムをみんなに伝えてきました。それでも…、やっぱり今のAKBには危機感がない!! きっと、いなくなってみないと分からないものなんですよね。だから、私は今夜、卒業としか言ってないけれど、無言でみんなに課題を与えたんです。手荒いやり方だし、うぬぼれに聞こえるかもしれないけど、私の卒業をリアルに言わないと、始まらないこともあったんです。今夜、本当の意味でAKB48の10年目スタートを切れました」。

 公演前は緊張したが、マイクを握ると「言うべきことがある」と我に返った。300人を引っ張ってきたリーダーの責任感だ。「(6日放送の)『めちゃイケ』さんの卒業ドッキリが、いいリハーサルになってました」と笑いながら振り返った。

 「発表日を決めた2週間後に番組の企画を聞かされたんですよ。真っ先に12月8日より放送日が後にならないかと心配しました」。卒業後の進路はソロ歌手としているが、同番組では迫真の演技で涙を流し、女優の可能性も感じさせた。それでも「本当の卒業発表も控えてたので、ある意味、あれは演技じゃなかったんですよ」と苦笑い。全ての真相を語る声は、すがすがしく聞こえた。【瀬津真也】

(引用終わり)

この記事を読む限り、卒業の決断も、発表のタイミングも、たかみな自身ではなく、秋元康によって決められたようだ。たかみなは秋元の意向に“驚きながら”従わされたに過ぎない。

まあこのこと自体は構わないと言うか、仕方のない面はあるだろう。AKBは秋元が、自分の好きなようにやりたいがために作ったグループなのだから、たかみなといえども従わざるを得ない。それに本人も10年目を区切りに卒業するつもりはあったようだ。

気になるのは、次の部分である。つまり、たかみなは、「グループのために個人を犠牲にする総監督を横山由依に託すことに当初、大反対だった。『かわいい後輩につらい役目は負わせられない。絶対に私で終わらせます。昔の私のように、勝手に引っ張る子が出てくるまでは、みんなで頑張れば良い』」。これはたかみなの本心だと思うし、きわめて真っ当な発想だと思う。

たかみなは、作られた総監督ではなく、自然発生的に誕生したリーダーだった。

ここまでAKBが成功したのは、たかみなの卓越したリーダーシップ抜きには考えられないと思う。秋本康は、たかみなという稀有な人材を得て、それに乗っかった。総監督という役職まで背負わせて。

AKBの奇跡は、高橋みなみという少女が期せずして発揮することになったリーダーシップと犠牲的献身に他のメンバーが呼応して生まれた自然現象だったという所にある。これは秋本康自身の思惑を越える現象だったに違いない。

たかみなは、「もう一度奇跡を起こそう。AKBが本来の形で続いていくにはそれしかない」と秋元に訴えたのだ。

しかし秋元は、ビジネスマンとしての判断から、「そんな時間は今のAKBにはない。先頭を切れる子がいないと、このグループはまとまらない」と判断し、横山由衣を高橋みなみのポジションに置くことを選んだ。

これは、ビジネスとしては正解かもしれないが、AKBという表現形式にとっては、敗北を意味する決断であると思う。

たかみな卒業は、やはりAKBという奇跡の終焉なのだろうか。