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らんまるのわがまま

昨日紹介した佐伯明「らんまるのわがまま」(音楽専科、1992)という本は、音楽文化ライター佐伯明が『ARENA37°』という音楽誌に連載したコーナー(1989年3月~1992年6月)を書籍化したものだ。

『ARENA37℃ (アリーナサーティーセブン) 』音楽専科社から発行されていたJ-POPを扱う月刊誌で、1982年10月に創刊され、2013年9月号をもって休刊している。

この雑誌をリアルタイムで手に取ったことはなかったが、「タイクツってやつに、ケリいれて!」などのストリート・スライダーズについての連載も載せており書籍化もされている。今とても読みたい本だが、絶版で手に入らない。

「らんまるのわがまま」に収められているのは、『SCREW DRIVER』のツアーから『NASTY CHILDREN』を経てスライダーズが休眠に入り、蘭丸が『麗蘭』を立ち上げレコーディングするまでの時期にあたる。

佐伯はこの間、ツアーに同行したり、メンバーと一緒にアメリカにローリング・ストーンズを見に行ったり、バンドに密着して取材を行うとともに、特に蘭丸とは一緒に国内(奈良、京都、沖縄)や海外(インド)を一緒に旅行したり、プライベートでも濃密な関係を築いていた。そういう関係性の中からしか生まれない文章が綴られている。

佐伯明の文章は『ロッキング・オン』で何度か読んだ記憶があるのだが、今読むと彼の文章には独特の外連味があってちょっと敬遠したくなる部分がないでもない。

しかし蘭丸との対話や他のメンバーのコメントは興味深いので今となっては大変貴重な資料である。

蘭丸が地球の古代史にマニアックな関心を寄せていることや、ハリーが北斎などの浮世絵にも詳しいといった、スライダーズの音楽を根底で支える要素に触れることもできる。

佐伯氏は2021年に亡くなったという(1960年生まれで蘭丸と同い年だから享年61歳か)。スライダーズの後はBzやらボウイやらを中心に書いていたみたいだが、Twitterを見る限り亡くなる直前まで蘭丸(土屋公平)とは親密に交流があったようだ。

ご冥福を祈りたいと思う。