INSTANT KARMA

We All Shine On

私とビートルズ

いかにしてビートルズは、常に時代の最先端を行く独創性を追求しながら、同時に大衆からの大きな支持を得ることができたのか。当時は彼ら以外のほとんど誰もが、その両者は互いに相反すると考えていた。また、いかにして(そして、なぜ)彼らは自分たちのうまくいったアイデアを、世界中でこぞって真似されるたびに、捨て去ることができたのだろうか。

マーク・ルイソン

青盤 1967-1970

CD1

08 愛こそはすべて(オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ)

世界初の衛星放送で全世界をつないだ中継で披露された曲。完全にジョンの曲で、終始ジョンがボーカルを取っているが、最後にポールが「イエスタデイ」や「シー・ラヴス・ユー」を歌うなどして自己アピールしている様子が微笑ましい。

09 アイ・アム・ザ・ウォルラス 

この曲のコード進行などを分析して、いかにとんでもない曲かを解説している動画がいっぱいある。ビートルズ初心者の頃は正直何がいいのかさっぱり分からなかった。既存のポップミュージックの型を逸脱してとにかくメチャクチャしたかったんだろうなというのは分かる(その極めつけが「レボリューション9」)。それでも結局極上のポップミュージックになってしまうところがすごい。ジョンがソロになってからはこうはいかないので、やはりビートルズという魔法圏内にいたが故のマジックだろう。

10 ハロー・グッドバイ 

「オブラディ・オブラダ」と同じポールの子供向けの曲、と思ってあまり好きではなかった。でも他のバンドがやったら陳腐で聴けたもんじゃない曲でもビートルズにかかればエバーグリーンになってしまうというのはやはり魔法としか言えない(ポールのソロでもこうはいかない)。

11 フール・オン・ザ・ヒル

これもいい曲なんだけど、ポールのバラードの中ではひとつ落ちる気がしていた。でも例の「ビートルズ バラード20」には入っていた。改めて聞くと、グッとは来ないけれどしみじみといい曲だなと思う。

12 マジカル・ミステリー・ツアー 

例の「コンプリート・ビートルズ」では「サージェント・ペパー」が大傑作で、その後の「マジカル・ミステリー・ツアー」はビートルズ初めての失敗作という扱いで、一般的な評価もそのようなものだろうと思う。しかし個人的にはこの曲なんて大好きだし、アルバムも曲ごとに見れば「サージェント・ペパーズ」よりいいんじゃないかと当時も今も思っている。大人になってからはどうしてもタイトルを聞くごとにタモリ「ラジカル・ヒステリー・ツアー」を思い出してしまう(あれはアルバムとしては面白くないんだが)。

13 レディ・マドンナ 

初めて聴いたときにはビートルズの音楽性の多様さを感じた。初期ビートルズに夢中でハマっているときには後期ビートルズには頭がついていかなかった記憶がある。

「Because」なんて、「ツイスト・アンド・シャウト」をやっていたバンドと同じバンドの曲とは思えなかったりした。この曲もある意味そう。ブラスがビートルズっぽくないなどと勝手に思っていた。

14 ヘイ・ジュード 

ビートルズの一番ヒットした曲」という情報だけを最初に知り、聴きたくて仕方なかったが中々ラジオではオンエアされず、ようやく「コンプリート・ビートルズ」の中で初めて聴いたときには感動した。後半は延々とコーラスが続いて7分を超える曲というのは当時は珍しかったとか。キャッチ―でインパクトのあるヒット曲が多い一方で、こういうアンセム的な曲もきっちりあるというのがさすがである(後に心酔するプリンスの「パープル・レイン」もこのパターン)。

MVも完全にポールが主役。この曲はジョンに離婚を切り出されて落ち込んでいるシンシアと息子のジュリアを慰めるために作った曲だというが、ジョンは演奏しながらどんな気分だったんだろうか(最後のコーラス部分で憎まれ口めいたことを言っているという話もあるみたいだが)。

15 レボリューション (2023ミックス)

これは大好きな曲で、「ホワイトアルバム」に入っているアコースティックなのもいい。他のメンバーのコーラスがないこのバージョンは今まで聴いたことがなかったので新鮮だった。

エルモア・ジェームスの「ダスト・マイ・ブルーム」をこんなにポップなロック(歌詞はけっこう過激)にしてしまえるのもビートルズの魔法だろう。