INSTANT KARMA

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夏川結衣

夏川結衣にハマってしまった。

結婚できない男』を見返した後に、未見だった『青い鳥』を見たのは既に書いたとおり。

『青い鳥』についてはまだ書きたいこともあるので、思いつくたびに書き足していくことにする。

昨日はついに夏川結衣主演のNHK連ドラでこれまた名作の評判が高い『菊亭八百善の人びと』のDVDを購入。これについての感想は、見終わったら書く。

『青い鳥』について忘れないうちにいくつかの点を。昨日、文庫本のシナリオ集を買って、最後まで一読してみた。

前回、逃避行に出てからの描写がいまいちだと書いたが、この作品はやはり自分にとっては第5話の電車の中で抱き合うまでに尽きる。

これ以降、「町村かほり」の個性はかなり希釈されてしまい、魔性の女は完全に身を潜める。強いていえば、彼女が自ら死に飛び込む場面に再び発揮されるのだが、それまではひたすらただの良い女になってしまっている。そしてそれを演じるのが夏川さんだけに、危うさの失われた、ただの善良な妻であり母にしか見えない。トヨエツを巧みに誘惑したあの儚げで吸い込まれそうな美しさはない。

個人的には、「町村かほり」の魅力は、夏川さんの堅気な美しさと危うい役柄のミスマッチから来る<ぎこちない危うさ>にあったと思っている。夏川さんの「愛人臭」が「かおり」に適任だったという感想をネットで見かけたが、あのかほりの雰囲気は夏川さんの演技であって、決して地ではないことは、『結婚できない男』の後では明らかだろう。愛人臭をもつ女優に早川夏美先生の役はできない。

かほりの名セリフ、

「・・・嘘ついちゃったね、、、初めまして、だなんて、ちょっと ドキドキしたね」

を改めて見てみると、彼女はこのセリフを、年増女の誘惑口調では語っていない。むしろ、小学校の先生が生徒に語るような口調である。棒読みといえば棒読みなのだが、それがこの場合とても魅力的だ。

これが本当に色気むんむんの流し目で言われたら、いかに興ざめかを想像してほしい。

もうひとつの印象深いセリフ、

「ねぇ、駅長さん。答えなくてもいいから、聞いてもいい?答えなくていいからね。

 ・・・私のこと、好き?

 私は、駅長さんのことが好き。

 こんなに静かに人のことを好きになったの、初めてかもしれない・・・・。

 この土地に来て、良かったなぁ・・・。

 駅長さんに逢えて、良かったなぁ・・・」

もまた、草原に寝転びながら、むしろ訥々と語られる。決して、男を誘うセリフには聞こえない。

だからこそ、次のトヨエツのセリフと行動が絶妙に生きてくるのだ。

見る者はここで、「町村かほり」のような女は決して現実には存在しないことを知る。

確かに、かほりのような行動をする女はいるだろう。しかし、それが夏川結衣のような女であることはありえない。つまり「町村かほり」は純粋なフィクションなのである。

そしてこのフィクションにリアリティを与えることができた夏川の美貌こそがすべての鍵であった。これはやはり一つの才能である。