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プライド

愛のむきだし』とほぼ同じ時期に公開された,満島ひかりの(準)主演作品である『プライド』のDVDを借りて見た。

作品自体は,同じくらいの才能に恵まれているが境遇に格差のある女同士の「プライド」の激しいぶつかり合いを描いた,ある意味典型的な少女漫画のパターン。

実際原作は有名な少女漫画ということだが,未読。

オペラのコンクールで始まったので,最後までオペラ歌唱の競い合いになるのかと思いきや,途中からはポピュラー音楽スタイルのボーカルしか出て来ないのにはちょっとがっかり。 両者はまったく質が違うので,ごっちゃにするのは無理があると思うのだが。

お目当ての満島ひかりは,『愛のむきだし』で開花した「むきだし系」の魅力をここでも発揮している。(撮影時期は,『愛のむきだし』の後らしい。) もっとも,『愛のむきだし』を100%だとしたら,『プライド』の満島ひかりは20%くらい。

DVDの監督らによるオーディオ・コメンタリーによれば,やりすぎるので抑えられたということらしい。(どうでもいいいけど,オーディオ・コメンタリーの緩さを聞けば,この作品がどの程度の「温度」で作られたかよく分かる。やけに生々しくて,ある意味本編以上に面白かったのも事実。)

読んでいないので分からないのだが,「萌ちゃん」は原作でもあんなに凶暴な性格なの? もし満島に合わせて過剰にアレンジしたのだとしたら笑える。

愛のむきだし』でのツンデレの「デレ」の部分は,素直に女の子の可愛い部分が全開という感じだったのだけど,『プライド』ではそんな純粋な「デレ」はまったく見られず,その裏にギトギトした野心が透けて見える,女の物凄く嫌な部分としての「媚び」でしかない。 そして,満島はそんな「イヤな女」を,非常に好演している。

しかも,相当メチャクチャなことをやっているにもかかわらず,満島の演じる「イヤな女」は,けっして後味が悪くない。それは「本当の悪」ではなくて,「偽悪」でしかないということが観ている者に伝わるからだ。そして物語の設定上も,それが正解なのである。

もっとも,本作では,萌の本性がむきだしになるまでに,さわやかな演技で観客のハートを掴んでしまっているので,若干そこが見えにくくはなっている。

満島は,本物の悪にはなれない。女優として,これは非常に大事な資質だと思う。観客の本能的な共感を呼ぶことのできない役者はいくら演技がうまくても主役は張れない。将来的に彼女が良質な作品できっちり主役を張れるのは間違いないと確信した。

他の役者については,主演のステファニーは,・・・なんというか非常に豊満で,気位の高いお嬢様役を好演していたが,いかんせん“棒”気味で,演技的に満島ひかりに食われていた感が否めなかった。個人的には,もう少し線の細い華奢なタイプがよかったような・・・

ミッチーは,演技力はともかく,この手の役は似合うな。カツゼツがよかったのには好感をもった。

注目すべきは高嶋礼子さん。いい役。過不足のない演技。そして高嶋礼子といえば夏川結衣。 というわけで,夏川さんと満島ひかりの共演がいつか実現しないかな〜なんて妄想の種が一つ増えた。

今の満島ひかりになら,人生狂わされてもいいかもしんない。