INSTANT KARMA

We All Shine On

ジョニー99

ブルース・スプリングスティーンが1982年に発表したアルバムネブラスカより。

『明日なき暴走』『リバー』といった傑作ロックンロール・アルバムを発表して押しも押されもせぬアメリカン・ロックンロール・スーパースターへの道を驀進していた彼が、突然自宅でアコースティック・ギター1本で録音した、デモテープをそのまま発表したようなこの作品は、その歌詞の暗さもあって衝撃を与えた。

最近明らかになった話では、このころスプリングスティーンは個人的問題とパブリックイメージとのギャップから精神的危機になり、うつ病で医者に通っていたという。

歌詞はどれもアメリカの低所得者労働階級のどん詰まりの状況や彼らの自暴自棄の犯罪を扱ったもので、自分の父親との関係を扱ったトラウマ的な曲もある。

最近のライブで、軽快なロックンロール・ナンバーとして蘇っている『ジョニー99』は、あたかも見事な短編小説を読んだかのようなドラマチックな印象を与える。

スプリングスティーンはこのアルバムの楽曲を作るにあたって「曲に登場するキャラクターの思いををリスナーに伝えたかった。リスナーをキャラクターのイマジネーションの中に連れて行きたかった」と語っている。

youtu.be

Johnny99 / Bruce Springsteen

 

マウワー(ニュージャージー州の都市)の自動車工場がその月の終わりに閉鎖された

ラルフは仕事を探したが何も見つからなかった

タンカレーとワインでしこたま酔っぱらって家路についた

その夜警備員を撃ち殺して今では「ジョニー99番」と呼ばれている

 

赤信号でも誰も止まらないような町外れで

ジョニーは銃を振り回して 自分の頭にぶっ放すぞと息巻いていた

非番の巡査が後ろから奴を捕まえて

「クラブ・チップトップ」の前でジョニー99番に手錠をかけた

 

公選弁護人がつけられたが判事は非情なジョン・ブラウン

彼は法廷にやって来てジョニーを見下ろした

証拠は明らか この犯罪にふさわしい刑を宣告する

懲役98年とあと1年 それでジョニー99番

 

法廷は騒然としジョニーの彼女は強制的に退去させられた

彼の母親は立ち上がって叫んだ 「判事様どうか息子を取り上げないで」

「では息子よ 最後に言っておきたいことはあるか

 永久に牢屋に閉じ込められる前に」

 

「判事さん 俺には借金があった 正直者には到底支払えないほどの

 銀行は担保に入いれた俺の家を取り上げようとしていた

 俺は自分が無実だなんて言っちゃいません

 でも俺が銃を手にしたのにはたくさんの理由があった」

 

「判事さん 俺みたいな奴はきっと死んだ方がいい

 頭の中で考えていることのために人を死刑にできるのなら

 判事さん もう一度判決を考え直してくれませんかね

 俺の頭を刈って 処刑場に連れて行ってくれませんか」