年末年始はいろんなことがあったような気がするが、日本ポップス界の巨星が突然逝ってしまったという事件が一番ショックだった。
自分は大瀧詠一よりは一つ下の山下達郎の世代の音楽に強いシンパシーを持つ者だが、彼が「はっぴいえんど」で日本のロックを完成させ、「A Long Vacation」で日本のポップスを完成させたという誰にも否定できない功績には最大限の敬意を持っているつもりだ。
山下達郎らの世代にとってのビートルズ(ビーチボーイズ)が、大瀧詠一にとってのプレスリーだった。たぶんもっと下の世代にとってのプリンスやマイケル・ジャクソンがそうであるように。
先に書いたように、大瀧詠一は、日本のロックやポップスを「開始した」のではなく、「完成させた」のだ。プレスリーがロックンロールを完成させ、ビートルズがロックを完成させたように。山下達郎やその下の世代は、大瀧詠一の世代が完成させた日本の大衆音楽の一つの形式(フォルム)をさらに洗練させた「にすぎない」のだと敢えて言おう。
僕はあの日からずっと「ナイアガラ・トライアングル」というアルバムを繰り返し聞いている。これは各世代にせいぜい数人現れるかどうかの才能が共同して創った稀有な作品である。
大瀧詠一を失ったことの意味を語るのにふさわしい人は確実にふさわしい言葉を残すだろうから、何も知らない自分は今はただご冥福を祈りたい。