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コンビニ人間

村田沙耶香コンビニ人間』が芥川賞

読者にとっちゃどうでもいいのだが、作家にとっちゃ大事なことだろう。

少なくとも村田沙耶香はもうコンビニでバイトを続けることはできないと思われる。

そのことで思い出したのだが、ポケモンGOはすごくて、うつで外出できずに苦しんでいる患者たちを次々に外出させることに成功。米国ではオバマ大統領の健康促進プログラムの成果を、たった1日で超えたとまで賞賛されているとか。

対人不安やうつ病に悩む人々が、ポケモン欲しさに、自ら積極的に外に出ようとしているのだという。

米国オレゴン州に住むジェシアンヌさんは、「ポケモンGOは、すでに医者やセラピストが薦めるどんなものよりも、自分のうつに効いている」と語り、オーストラリアに住むララさんは「ポケモンGOはたった1週間で私の病気をものすごくよくしてくれた。ポケモンGOは、うつや不安に悩む私を助けてくれて、外に出してくれたの」と話す。

米国に住むデヴィッドさんは「本当の話だ。不安やうつに悩む者として、週末のほとんどを外で友人と過ごしたなんて事実は、自分にとっては現実じゃないみたいだ」という。

このように、精神疾患が原因でこれまで外出できなかった人々が、ポケモンGOをすることで、外に出ることができてきたのだ! もちろん、ポケモンに興味のない精神疾患患者にとっては、このアプリは意味のないものだが、それでも全患者の一部を救うことができるだけで、ポケモンGOの意義は大きい!

すでに米国の心理学者や精神医学者が、メディアのインタビューの中で、ポケモンGOが、精神疾患患者に対して「意図せぬポジティブな効果」を持っているという意見を表明している。

ポケモンGOがうつや社会不安障害に悩む人々のとって有効なのは、ポケモンをゲットするために外に出る、ということだけではない。いくつかほかに要素があると言わざるを得ないのだ。

そのうちのひとつは、ポケモンを育てるためには、2kmから10kmのウォーキングが必要なこと!

もちろん家の中を歩いてもいいが、歩くこと自体に意味がアルッ! それは歩くことで、うつと関連性が深い脳内ホルモンであるセロトニンの分泌が促されるから。セロトニンは、不安を低減し、心の安定をもたらす作用がある。うつや不安患者には、脳内でのセロトニンの分泌や摂取に問題がある場合が多い。そのセロトニンの体内での分泌を促すのに効果的なのは、規則的で苦痛が伴わない有酸素運動なのであるっ。このため軽いダンスやウォーキングなどが推奨される。

余談だが、ネット上ではこれをやりたくないユーザーが、プラレールの上にスマホを載せて動かしたり、ドローンを使ったりして、「動かずに動く知恵」を働かせている様が面白おかしく紹介されている。歩きたくない人の代わりに歩く「代行歩行屋」まで現れる始末。

話が逸れたが、セロトニンの分泌のために重要なのは「苦痛を伴わない」という点。イヤイヤ歩いていたのでは、セロトニンは分泌されない。だが「ポケモンを育てる楽しみ」があれば、よりセロトニンが分泌されるかもしれないぞ。

このため、ポケモンGOをプレイしていたら、いつの間にか外でたくさん歩いていた、という行動は、うつや社会不安に悩む者にとって、それらを克服するために最も必要な行動ということ。むろん、ダイエットや運動不足にもよく、このゲームのもたらす「意図せざる効果」には驚嘆の一言しかない。

通常、うつや不安に悩む人への対処は、「不安を取り除く」ことがメインとなる。何が不安の原因かを、カウンセリングにより探り、効果的なセラピーを選択していく。ポケモンGOが革命的なのは、それとは違うやり方で人々を外に出したことだ。それは「不安を取り除いて人々を外に出す」のではなく「もっとすごい興奮(ポケモン狩り)を提供して人々を出す」というもの。このことは、人類の歴史的に見ても、実に画期的なことだと思っている。

不安を取り除くセロトニンではなく、むしろ最初のきっかけは「興奮」をもたらすドーパミンを使う。外に出る最初のきっかけは、安心ではなく興奮のほうが、効果が高いということが証明された。

だが、基本的にドーパミンの効果は一時的でしかない。例えば覚せい剤は強力にドーパミン系を刺激して、ものすごい興奮が得られる薬だが、それが切れたときには、かえってうつになりやすく、ひどい禁断症状が出ることは、知識としてご存じの方も多いだろう。このように、ドーパミンは一時的には作用するが、それがなくなったときの反動が大きい。

もしポケモンGOが本当にうつや社会不安障害に効くならば、それはドーパミンだけではなくて、やはりセロトニン系をも刺激するものでなくてはならない。上記のポケモンを育てる強制(だが強制と思わない)歩行は、セロトニン系を刺激する大変良い仕掛けだと思っている。

メンタルヘルスケアとしてポケモンGOが優れているもう一つの理由がある。

米国フロリダ州に住むナオミさんは「ポケモンGOは、自分の社会不安を癒やしてくれるかもしれない。会った人は皆すごく親切だった。最初に自分が思っていたほどには、他人は怖くないのかもしれない」とツイートした。

他人と会うことが怖いのは社会不安の典型症状だが、ポケモンGOには、そういった人々の対人恐怖を取り除くことができる可能性がある。皆おなじ目的のために集まって、和気あいあいとポケモン話に花を咲かせる。さらにジムと呼ばれる場所での集まりや、今後搭載される「ポケモン交換機能」は、ますます人々同士の親密なコミュニケーションを引き出すことになるだろう。

他者との良い関係は、社会不安やうつにとって最も重要な「薬」である。それはセロトニンばかりでなく、愛情ホルモンや信頼ホルモンと呼ばれる脳内物質、「オキシトシン」の分泌も促すのだ。

脳内物質でみれば、ポケモン欲しさに外に出るのはドーパミン系の力。その後のウォーキングでセロトニン系が働き、同じユーザー同士の良い関係でセロトニンオキシトシン分泌を促進するのがポケモンGOの仕組み、となる。

専門的には、こういった脳内物質だけで、人間の社会性すべてをコントロールできるわけではもちろんない。だが少なくともポケモンGOはこれまで様々な医療ができなかったことを、やっている。それも世界規模でだ。その意味で、メンタルヘルスケアに関わるものとして、この現象は注目すべきだと感じている。

もっとも、所詮ポケモンGOのようなおもちゃで治るような病気なら誰も苦労しない。ポケモンGOをみんなに配れば世界の問題は解決するなんていうのは、インスタント・スピリチュアル・マスターのところに通って、悟っちゃったとかわかっちゃったとか言って喜んでいるような連中と同じだ。