INSTANT KARMA

We All Shine On

aliens

いい曲ですよね、キリンジの『エイリアンズ』。 カラオケでは必須のレパートリーです(嘘。難易度高すぎて歌えない)。

けだるくて甘い、そこはかとなくシュールで危うい感じのメロディーが、さらにヤバい歌詞によって深みを増している。 歌詞はいくつもの解釈が可能で、ただの男女の戯れのようにも思えるし、不倫とか、同性愛とか、もっと危険な解釈だってできる。 でも歌詞からほぼ確実に読み取れるのは、バイパス寄りの公団住宅、つまり地方都市の風景。 旅客機(ボーイング)の小さい姿が遥か高い空を音もなく横切っていく。 近所で言い争う人たちの声も寝静まる夜。 寝室に差し込む月明かり。 事が終わった後、ベッドで枕を並べているパートナーは泣いている。 なぜ泣いているのか、想像力をかきたてる。 月明かりが二人の額をなでる。

まるで僕らはエイリアンズ 禁断の実を頬張っては 月の裏を夢見て

世の中から疎外されている気分でつながっている者どうし 二人だけのイケナイコトをしながら 誰も来ない、誰からも見えない場所を求めている

きみが好きだよエイリアン この星のこの僻地で 魔法をかけてみせるさ いいかい?

この世界の片隅に想像力という名の魔法をかけて 束の間の全能感の陶酔に浸るぼく この気分をきみにも分かってほしい 夜明けが近づいて、何匹かの犬の遠吠えと、スポーツカーのエンジン音が響く パートナーはまだ泣いている どうか笑っておくれ 素晴らしい夜だと思わないか?

僕の短所をジョークにしても眉をひそめないで

不謹慎だとか自分勝手だとか思わないでほしい タブーなんかないんだ 僕と価値観を共有してほしい 一緒に外に出ようよ

そうさ僕らはエイリアンズ

街灯に沿って歩けば

ごらん新世界のようさ

こうやって街灯の下を歩くふたりは 映画のワンシーンみたいじゃないか 世界がまったく違って見えると思わないかい?

踊ろうよさあダーリン ラストダンスを

暗いニュースが 日の出とともに町に降る前に

もうすぐ夜が明けて どうしようもない世界がまた訪れる その前にもう一度愛し合おう これが最後かもしれないから

きみを愛してるエイリアン

この星の僻地の僕らに

魔法をかけてみせるさ

大好きさエイリアン わかるかい?

どうしようもないナルシストで厭世的な男のロマンチックで自分勝手な夢想のようにも聞こえないか? 現代の安部慎一のよう。大傑作。