War Is Over

 if you want it

Not Particularly

MUSICA「藤井風8万字インタビュー」の中で面白いと思った発言を挙げていくと百三十個以上出てくるので、その中から数点だけ絞り込んでみたい。

「もうええわ」という曲について、「手放す」ということがテーマなのでは、と尋ねられたときの答え。

何かを手に入れることにフォーカスした歌は凄くたくさんあると思うんですけど、何かを手放すことにフォーカスしたポップソング、J-POPみたいなものはあんまりないかなと思ったので

〈執着からの解放〉という仏教の教えのようなものを歌詞にした〈ポップソング〉は確かに今まであんまり、というよりほとんどなかった。しかし、何でもかんでも手に入れようとガッつくよりも、むしろモノやら自分を取り巻くものから解放されたいと切実に感じ始めている世代にとっては、こういうメッセージのほうがむしろポップなのかもしれないと思った。

「特にない」という曲も、「足るを知る」ことがテーマになっている、と風自身がライナーノーツに書いている。

今の話とも関連するが、これからの方向性を尋ねられて、こんなことも言っている。

ひとつ確立したいスタイルがあるとするならば『脱力』みたいなものかもしれないなって、2枚目(Love All Serve All)を通して思ったかもしれないですね

従来のポップソングというのは、ともすれば「がんばれ私!」「がんばろう日本!」みたいな〈人生応援歌〉的なベクトルが主流だったのではないかという気がするが、藤井風が目指すのは、むしろ肩肘張って頑張るのではなく穏やかで柔らかな心をもって物事にゆとりをもって対処していく、そういう生き方のようだ。

そして、

今の世界的に見ても、そういうスタンスは大事なんじゃないかなと思いますね

という俯瞰的な視点からもそのように考えている。二十四歳という若さでここまで達観できるものだろうか。

そんな藤井風の代表曲の一つみたいになった感じもある「帰ろう」という曲については、

ちょっと大きすぎて普段はあんまり聞かない曲です(笑)

この曲の大きさに潰されそうになるみたいな感覚を覚えることもありますね

たとえばこの曲がわしの代名詞みたいな感じでひとり歩きしないでよかったなって・・・今となってはそんなことを思わされたりする曲ですね

と語っていて、〈スケールの大きな人生哲学を悟りきった様子で歌うカリスマ歌手〉というイメージを拒絶しようとする姿勢にむしろ健全な感覚を覚え、信頼できる人だなと思える。

とにかく藤井風はカリスマ性が凄いので(笑)、ともすれば教祖みたいになってしまうことも十分にあり得るのだが、あくまでもポップなエンターテイナーであろうとする自覚を持っているのが頼もしい。

まだまだ語るべきことはあるのだが、歯の詰め物が取れたので今日はこのへんにする。