大村彦次郎「文壇栄華物語」と「文壇挽歌物語」を読む。
編集者の目から見た戦中戦後昭和文壇史の舞台裏。とても面白く読めた。
物語全体の支柱になっている人物の一人が和田芳恵であるというのがいい。
解説を坪内祐三が書いていて、あとがきにもちょっと出てくる。
坪内祐三が、野間文芸賞のパーティーに出て、受賞者の西村賢太に冷酒をご馳走するエピソードの出てくるエッセイの冒頭に、大村彦次郎が近づいてきてニコニコ話しかけてくるくだりがあって、今読むとなんだか感慨深い。
小説そのものよりも、文壇というものを巡る面白さというのは確かにあって、もうそれは跡形もなく失われてしまったのだろう。
西村賢太も、文壇嫌いのようでいて、実は一番文壇的な作家(そして最後の文壇的な作家)だったような気がする。
大村の本には、西村の好きな田中英光についても深い理解に満ちた記述がある。