INSTANT KARMA

We All Shine On

エレンディラ

朝の通勤電車でガルシア=マルケスの「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」を読み始めたら夢中になり、ちょうど読み終えるタイミングで降りて、一本の大作映画を見たような気分を味わった。

映画を見るより原作を読む方が好きなのは、映画は飛ばし読みができないから。最近は映画も早送りで見るのが流行っているようで、そういう見方はダメだとする意見が多数のようだが、自分にはその気持ちが分からなくもない。

たしか上岡龍太郎も昔テレビで、本は自分のペースで読めるが映画はそうはいかないから嫌だ、と言っていたのを見た記憶がある。そういうせっかちな部分に共感した。

逆に今、毎朝見ている「あまちゃん」はテンポが速すぎてついていけないくらいで、原作を読むよりもテレビで見る方がずっと面白い。

映画は出来上がったフィルムを再生しているだけだが、舞台はその度に生きた役者たちが演じるというハプニング性があって、そこが魅力である。「あまちゃん」はテレビドラマでありながら毎回演劇を見ているような感覚があるのは、舞台で演じ慣れている役者たちが多く、脚本の宮藤官九郎が彼らに合わせて、生き生きとした演技を引き出すように書いているからだろう。そんな演技巧者たちに交じって演じることで能年玲奈の魅力が存分に引き出されている。毎日奇跡を見せられているような新鮮な驚きがある。

 

早出残業を陰湿な形で命じられた翌日から動悸息切れ眩暈のため会社に行けなくなった息子は適応障害と診断され、休職を願い出たら折り返し解雇するとのメールが来た。解雇理由は「新人のくせに自分の意見を言おうとする」という信じ難いもので、「次期社長である社長令嬢の意に沿わない人間は必要ない」とも言われたようだ。「研修」名目での片道2時間のハードな工場勤務に文句も言わず1か月耐えていた息子が本社勤務から2か月足らずで別人のようになって毎日抗不安剤睡眠薬がないと生きていけない状態になったのは、「うちは昭和体質だから」というのが口癖の上司や面と向かって「あなたとは仕事しづらい」と言い続けた社長令嬢のパワハラめいた言動が原因としか思えないのだが、解雇を争って関係を長引かせるよりは、こんな昭和というより戦前の陸軍や今の北朝鮮のような体質の職場とはさっさと縁を切るに如くは無し、という気がする。そんな風にして不当な解雇に泣き寝入りしている人も多いと聞くが……

佐久間宣行が自著「ずるい仕事術」の中で述べているように、心を壊してまでやるべき仕事なんてどこにもない。死守すべきは仕事よりもメンタル。「たかが仕事」という精神を忘れちゃいけない・・・などと自分では分かったつもりになっていたのだが、自分の家族をこんな目に遭わせてしまったのには忸怩たる思いがある。

一度メンタルを崩すと、調子を取り戻すのには時間がかかる。苦しんでいる息子を見るのは辛いが、今はとにかく回復するまで見守ってやるしかない。