INSTANT KARMA

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まつもtoさくま

僕にとってはアイドルグループ「ラフ×ラフ」のプロデューサーであり、逸材・永松波留を発見した人でもある佐久間宣行が、18日放送のフジテレビ系「まつもtoなかい」(日曜後9・00)にゲスト出演した。

そこで松本人志から「僕の欠点て何ですか?」と訊かれた佐久間の回答が見事なものだった。

少し丁寧に経過を辿ってみる。

「まつもtoなかい」とは松本人志中居正広の二人がMCを務めるトーク番組。今期のフジテレビが打ち出す大型企画番組である。

今回は前半に俳優・伊藤英明が登場。ひとしきりトークが盛り上がった後で、佐久間が登場し、テレ東のプロデューサーとして「ゴットタン」などのヒット番組を作り続けてきた佐久間の経歴がVTRで流される。ダウンタウンや松本はテレ東の番組に出たことがないという話から始まって、伊藤英明がマニアックお笑いファンであるという素顔が佐久間の口から明かされる。

すると、おもむろに松本が

「佐久間さんにぜひ質問したいことがある」

と発言。

「僕の欠点は何ですか?」

今のテレビ界に君臨する王様である松本から、いきなりボディーを抉るような先制パンチが来た。

戦国時代の出来事のような一場面である。

武功を称えられ御城に呼ばれた武将が、しばしのもてなしを受けた後、将軍から「余の至らぬ所を指摘せよ」と命じられる。

これはいきなり喉元に切先を向けられるようなものだ。

答え方を間違えると忽ち頸が飛ぶことになる。

「御殿に欠点など御座いません」と心にもないことを言っても頸が飛ぶし、欠点と見えても実は美点であったというような変に持ち上げるような当たり障りのない諂いも通用しない。ギリギリの所でどう振舞うのか、人間の底力が試されている。

大喜利で言えば究極の<お題>を突き付けられた佐久間は、しばし考慮ののち、こう答えた。

松本さんは、『ビジュアルバム』の世界あるじゃないですか、あれを世の中に出さないのかっていう気持ちがあって。映画もされてるじゃないですか。松本さんの映画とか『ビジュアルバム』を世に出すブレーンが今いないんじゃないか」

「松本さんのお笑いと、もう1個のお笑いの中のフォーマットをつくる以外の、イマジナリーの部分のお笑いとつなげる人がいないような気がします。ご自身でもプロデューサーもできるから、今までやってこれちゃったんだけど、松本さんの思う気持ち悪いあの世界が世の中に出るのを見たいんですけど、そのためにはプロデューサー松本人志じゃないんじゃないかなと

映画っていうものにアウトプットしていくときにブレーンが必要なんじゃないかなと思って

この回答を聞いた松本は、深く頷きながら「天才! これは売れる!」と叫んだ。

まさに図星を突かれた殿様の表情であった。

佐久間の言葉は実に色々なものを含んでいる。

まず「ビジュアルバム」を「松本の笑いの到達点」と見た慧眼。

そして「気持ち悪いあの世界」が未だ映画として成立していないという、松本の一番痛い(それ故に一種のタブー視されている)ところを突いた勇気と鋭さ。

また、「松本の真の才能をアウトプットするためのブレーンが必要」と指摘し、さりげなくプロデューサーとしての自分の起用をアピールする辣腕ぶり。

これらの内容を、決して相手に不快感を与えず、真情からの助言と思わせる、ボディランゲージや口調を含めた伝え方のスキルの高さ。

お題への返しとして完璧な、まさに100億点の回答であった。

凄い場面を目撃した、と久しぶりにテレビ(正確にはTVer)を見て興奮した。

そして、こんな人に見出されたラフ×ラフ幸運だったなあ、との思いを新たにした。