禅とか公案は基本的に好かんのだけど(スノッブの臭いがするから)、
臨済録に出てくる普化っていう、猛烈に人を喰った僧の話は面白い。
案の定、隅田川乱一の本の中にも書いてある。
ある日、普化は町の通りで人々に僧衣をねだっていた。みんなそれを与えようとしたが、普化はどれも受け取らない。
臨済は、寺の事務長に棺おけを一そろい買わせた。普化が帰ってきた。
臨済「俺はお前に僧衣をつくっておいてやったぞ」
普化はそれをかついで出てゆき、町々にふれてまわった。「臨済が俺に僧衣をつくってくれたんだ。俺は東の門でおさらばするぜ」
町の人々は先を争って普化の後をつける。
すると普化は「今日やるのは止めた。明日、南の門で死ぬよ」といった。
こんなことを三日も続けたので、人々はもう信じなくなった。四日目になると、誰も後をつけてこない。
普化は一人で町の外に出ると、自分で棺おけの中に入り、旅人に頼んで釘を打ってもらった。たちまち話が広がった。町の人々は先を争って集まってくる。
棺を開けてみると何もなかった。
隅田川乱一「JAM」創刊号1979年3月
ハリー(村越弘明)の詩にもこんなのがある。
牢屋の中で考えた 罪とは一体何ぞやと
達磨歌など御所望か 慧可の話もお望みか
盤若面ども ここでおさらば
臑に疵持つあんたじゃねえか
明けねえ冬にカンパニア 腓返りの生玉消えた
ああ またしても 生き延びちまった
吐き出しちまうさ 巷の垢なんか
罪のアジトに立て籠もるのか
あんたが来るのを待ってるだけさ
生きた空もねえ 生玉消えた
生きた空もねえ 生玉消えた
「生玉(いくたま)」
図書館で次の本を借りた。
西尾 勝彦「のほほんと暮らす」(七月堂)