NHKのクローズアップ現代で「“ジャニーズ性加害”とメディア 被害にどう向き合うのか~なぜNHKも含め、テレビ業界は長年、ジャニーズの性加害問題に向き合ってこなかったのか」という番組が放送された。
もとより問題の本質に迫る(芯を喰った)自己検証は期待しておらず、NHKがこの問題をどうやって「お茶を濁す」のかを知るために見たのだが、大方の予想通り、現場の人間の言い訳を垂れ流すだけの、何の中身もない番組だった。
なんとか我慢して見終わったものの、腹が立って、仕方がなかった。
NHKは反省してます、というふりをするためだけに作られた茶番であった。
この件で誰が何を言っても白々しい。反省の弁など聞きたくない。具体的な行動で示されないとまったく信用できない(もともと信用なんてまるでないんだが)。
史上空前のジャニーの性的虐待の問題を本当に検証するためには、ジャニー喜多川の先祖にまで遡った重厚な一代記を書く必要があるだろうが、そんなものを書けるノンフィクション作家は今の日本にいないだろう。
テレビ局をメインに芸能関係のヘアメイクをやってた人の証言によれば、30年前から20年前にかけては、ジャニー喜多川の異常な少年性愛は業界関係者なら誰もが知ってる常識で、それでもジャニーズ事務所に入る男の子たちは「それを覚悟した上でスターになりたくて入所した子たち」と認識されていたという。
当然自分の子どもを入所させる大人たちも認識していただろう。
海外の純粋な児童虐待事件と違うのは、被害者の側(少なくともその一部)にもそれを受け入れて利用するという側面があったからだ(宮台真司などはそれを「通過儀礼」と呼んでいる)。ジャニー喜多川と一部のタレントとの親密な関係性は、「グルーミング」という言葉だけでも片づけられない。
もちろん「受け入れていた」のは一部のタレントで、その後にスターとなり、それなりの「報酬」を得た人間に限られる。おそらくほとんどのジュニア・タレントは単に「やり捨て」されただけだろう。数千人以上に及ぶ被害者の数を考えれば、ジャニーがエンターテイメントにもたらしたと山下達郎などが主張する「功績」をもってジャニーを免罪することなど到底できない(自分は「功績」があったなどとは一切認めない。日本のエンターテイメントの質を劣化させただけだと思っている)。
そして、この番組では、芸能事務所の圧力という部分について全く触れていなかったので、何をどう反省するのかが最後まで曖昧なままだった。
自分が今知りたいのは、
どうして「あまちゃん」以降能年玲奈がNHKのドラマに一本も起用されなかったのか。
その背後には何があったのか。
そのことと、今回のジャニーズ問題は確かにつながりがある。
この、〈今ここにある忖度〉に踏み込まない検証番組など検証の名に値しない。
ひたすら不愉快な番組であった。