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第71期王座戦5番勝負第3局

niftyメールに「Amazon.co.jp」から「重要なお知らせ」というスパムメールが1日100通くらい来る。

これを防ごうと思ったら、「迷惑メール設定」というのをするのだが、そうするとIDメール(abc12345@nifty.com)が受け取れなくなるので、他のいろいろ連絡用メールに設定しているところ(本物のAmazonも含む)からのメールが受け取れなくなる。

8月にニフティが仕様変更する前にはこんなことはなかったのだが、非常に不便で困っている。他にそういう人いませんか?

 

昨日の第71期王座戦第三局は、先手番で圧倒的勝率を誇る挑戦者・藤井聡太竜王名人を、後手番の永瀬王座が追いつめて、終盤ほとんど勝ちの局面になったのだが、藤井の飛車打ちの王手に対して、素人でも第一感の底歩の合駒ではなく、玉の横に飛車を合駒に打ったために、次の両金取りの角打ちが厳しく一手で形勢が逆転してしまった。これで藤井七冠は対戦成績を2勝1敗とし史上初の全8冠制覇にあと1勝と迫った。

こんなことがありうるのか、と誰もが目を疑う逆転劇であった。

永瀬王座が第1局から見せている正確無比な差し回しと、決して諦めない「負けない将棋」の勝負術の凄さを目にしている我々からすれば、ここで永瀬王座が間違えるとは夢にも思わなかった。風呂でスマホで見ながら思わず「ああっ」と声を上げてしまった。

野球で言えば、4-0で負けていて9回ツーアウトランナー無しからの大逆転劇。

サッカーで言えば、後半ロスタイムを迎えてからの自殺点による逆転勝利。

ボクシングで言えばアリVSフォアマンのキンシャサの悲劇。

 

対局後、永瀬王座は「後手3一歩が第一感でしたが、エアポケットに入ってしまった」と述べた。素人目でも第一感と書いたが、実はその後に容易ならざる変化があり、永瀬はその罠に落ちないことの確信が持てなかったのだ。しかも不運なことに彼はその前に持ち時間を使い切って1分将棋に入っていた。

 

相手が藤井でなければ、たとえ読み切れていなくても永瀬は3一歩を打ったに違いない。そうすれば逆転はなかった。もちろん藤井は自らの負けを読み切っていた。

王座戦の決勝トーナメントの村田六段戦でもそうだったが、まるで星飛雄馬の大リーグボール第3号でボールがバットに吸い寄せられるようにして、相手は催眠術のように悪手を指してしまうのだ。かつての大山康晴名人は実際に催眠術のようなものを使って相手に間違わせていたという話が伝わっているが、藤井聡太にも似たようなものを感じずにはおれない(藤井の場合は無意識的であるだけにさらに厄介である)。

 

ところが実際には、藤井の場合は、大山の催眠術のようなものとは違って、緻密な計算に基づいて大逆転の構図を描き、永瀬の緩手が来る瞬間を虎視眈々と狙っていたらしいことが、局後の複数の棋士の検討によって明らかになりつつあるという。

確かに、正解の31歩を指しても、その後にも「唯一の」最善手を指し続けなければ永瀬が勝てないような仕組みになっており、1分将棋で完全に読み切るのは不可能な膨大な変化が隠されていたのである。

強ければ強い棋士であるほど、その膨大な変化に潜むリスクが見えてしまうために、紛れのなさそうな選択肢を選ぶ。だがその選択肢にもまた強烈な罠が仕込まれているのである。

藤井の勝負術は、永瀬の強さと読みの深さを計算に入れた上で、さらにそれを上回る計算によるものであった。あなおそろしや。

 

この将棋の観戦記は、詰将棋世界のレジェンドであり、藤井聡太の子どもの頃の才能を誰よりも早く発見した若島正氏が書くことになっている。

wellwellwell.hatenablog.com

若島氏がこの二人の終盤のドラマをどんなふうに描くのか、読むのが楽しみである。

 

八冠誕生を賭けた王座戦第四局は、10月11日、京都市ウェスティン都ホテル京都」で行われる。