花房 観音「京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男」 (幻冬舎文庫、2022年)を読んだ。
山村美紗には興味なかったが花房観音が書いているので読んでみた。流石に読みやすく巧い文章を書く。
出版業界でタブーとされてきた西村京太郎との関係、夫の巍(たかし)とその妻・祥(しょう)に焦点を当てた点が見どころ。松本清張との関係も面白かった。
そういえば、昔「噂の真相」のイラストコーナーで西村京太郎と山村美紗のどぎつい絵をよく見た記憶が蘇って来た。
今になってようやく取り上げられているジャニー喜多川の件といい、やはり「噂の真相」(岡留安則編集長)のような雑誌は貴重な存在であったことがしみじみと痛感される。
ジャニーズに忖度しているテレビ局が今批判されているが、出版業界も西村京太郎のような大物作家に忖度して花房観音の執筆出版を妨害したことが示唆されている。
要するにこの国のメディアなんてものはすべて忖度だらけで腐りきってるのだなと思った。言論の自由なんて、どこにもありゃせん。
西村京太郎は2022年3月に、夫の巍(たかし)は2022年8月に亡くなった。
花房観音もこの本の文庫化の作業をしている中、2022年5月に心不全で入院。
なぜか〈情念〉とか〈怨霊〉という言葉が「京都」というキーワードと共に浮かんできた。
この本が評価できるポイントは、巻末に年譜と著作リストがきっちり載っているところ。評伝には詳細な年譜だけは欠いてほしくないもの。