INSTANT KARMA

We All Shine On

For George

ジョージ ジョン。

ジョン なんだ?

ジョージ これが終わったら何をしたいか、教えてあげる。

ポール このテレビの後?

ジョージ このショーの後。10年分の・・・10枚のアルバムを作れるくらいの、曲のストックがあるんだ。だから、アルバムを作りたい。

ジョン 自分一人のか?

ジョージ そう。

ジョン いいな。

ジョージ なんで作りたいかというと、溜まった曲をさばきたいから。

ジョン 理由は何であれ、アルバムを作るのはいいことだ。

ジョージ それから、自分の曲がまとまって入ると、どういう感じになるかみてみたい。

ジョン ジョージがアルバムを出すのは、僕が自分のアルバムを出すのと同じことだな。

ジョージ それぞれが別々にアルバムを作れたら、それにより、これ―つまりビートルズを、長続きさせることができる。

ジョン どんな曲も吐き出したらいいさ。

ジョージ 僕の曲を全部他の人にあげることもできるし、いい曲に仕上げてくれる―でも突然気づいたんだ。そんなの全部クソくらえって。たまには自分のために何かしようって。

ヨーコ それは素晴らしい。素晴らしいアイディアね。

ジョン ああ。

ジョージ 最長でも一週間もかからずに全部レコーディングして、リミックスしたりなんだのできるはずだ。シンプルな曲ばかりだからね。あまり手間をかけないほうがいいと思う。レズリー(のスピーカー)があれば、ギター一本だってなんとかなる。

 

1969年1月29日、ゲットバック・セッションでの会話

藤本国彦「ゲット・バック・ネイキッド」より

このやり取りを読むと、涙が出そうになる。10枚のアルバムが作れるくらいの曲のストックがあるのに、ジョンとポールの自己顕示欲に隠れてほとんどまったく発表させてもらえず、「ビートルズを長続きさせるために」自分のアルバムを作りたいというジョージ。

ジョンは偉そうな態度で「やってみたらいいじゃないか」とか言っているが、心の中ではどうせたいしたものにはなるまい、と見下しているのが透けて見える。

ところが、間違っていたのはジョンの方だった。

ジョージが解散後に出した三枚組の「オール・シングス・マスト・パス」こそ、ソロになったビートルの出したすべてのアルバムの中でも最高傑作だと断言できる。

確かにジョンもポールもいいアルバムは出しているが、三枚組(正確に言えば二枚組)で捨て曲(中くらいのレベルの曲)が一曲もない、全曲が素晴らしいというアルバムはジョージのこのアルバムだけだと思う。

ジョージの「溜まっていた曲」のクオリティたるや、すさまじいものだった。

これにビートルズの最後の方で発表した「サムシング」や「ヒア・カムズ・ザ・サン」などを含めたら、この時期に質量ともに一番いい曲を作っていたのはジョージだったんじゃないか。

そりゃあ、これだけの曲をストックしているのに、ゲット・バック・セッションでポールにダメ出しされてジョンにバカにされたら出ていきたくもなるよ。

 

というわけで、11月29日のジョージの命日に、「コンサート・フォー・ジョージ」を観てきた。

まさかビートルズを聴きながら泣くことになるとは思わなかった。

全曲素晴らしかった。

エリック・クラプトンに感謝しなければならない。

感動しすぎて感想が書けないので改めて。