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又吉直樹『生きとるわ』考察(3)

この記事は、この記事を読んでから読むのに適しています。

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この記事の最後に、小説内時系列を現実世界の時系列(2023年9月14日~同年11月5日)に合わせるために、第11回の龍先輩の

来週に十三でアコースティックライブすんねん。もし時間あったら来てくれへんかなと思って。」

というセリフを

「あんな、急な話で悪いねんけど、明日、十三でアコースティックライブすんねん。もし時間あったら見に来てくれへんかなと思って」

に書き換えるという禁断の原作改変行為を行った。

こうすることで、本当に小説と現実世界を同期させることができるのだろうか。

検証してみたい。

 

10月17日(火)

龍先輩のライブに行き、ライブ後に龍先輩と二人きりで語り合うことに成功するが、借金は断られる。(ここから第12回)仕方なく大倉の店に向かう。いよいよ手詰まりになり自暴自棄の岡田は香織の部屋に行ってハロウィンのコスプレをして痴態を晒す。

10月18日(水)

自宅で二日酔い状態の岡田に横井からメールが届く。「止まり木」に呼び出され、香織との画像を見せられ、300万要求される。

10月19日(木)

朝、顧客の山下夫人に電話し、税務修正申告を騙って山下夫人の家で現金300万円を受け取る。(ここから第13回)横井の指定した口座に300万円を振り込む。妻からやり直すことにしたと連絡があり、妻が家に戻ってくる。

10月20日(金)

出勤途中に香織から「取り返しのつかないことになるから」すぐに会いたいと連絡が来る。

10月21日(土)

午後に香織の部屋を訪ね、マンションを出たところで三人組の男につかまる。この暴露系ユーチューバーと弁護士のチームから不倫について問い詰められ、謝罪させられる。

数日後、取引先の現場から会社に戻る途中、「先日の三人組の一人」弁護士の毛利から200万の示談金を要求される。

この日付はいつか。10月22日(日)は休日なので出先の仕事があるとは考えにくい。とすれば、10月23日(月)と考えられる。数日後との記述とも何とか整合する。

10月24日(火)

岡田は妻の出勤を待って、自宅のリビングから午前10時きっかりに山下夫人に電話し、家を訪れる。だが200万を再度騙し取る試みは失敗する。先週末(10月21日、22日)に山下夫人の息子が税務署に確認して嘘がばれたのやった。

第14回の冒頭、毛利にもう少し待ってくれと電話するがあっさりと断られ、話し合いの日時がメールで送られてくる。これも10月24日(火)のこと。話し合いの日時は「想像していたより急やった」

話し合いの日が来るまで、落ち着かない時間を過ごした。

この話し合いの日付が問題となる。10月25日、26日では早すぎる気がするから、10月27日(金)ではないやろうか。

自宅近くの駅近くのマンションでの話し合いには香織が先に来ていた。200万は用意できなかったと開き直る岡田の態度に香織が動揺し、そこにあらかじめ連絡を受けていた妻が登場する。妻の気丈な演技によってその場を何とか逃れるが…。

10月28日(土)

朝、妻が出て行き、夜に京橋で待ち合わせ、離婚届を突き付けられる。仕方なく判を押し、離婚届の提出に同行する。最後に取り縋るも不可。

10月29日(日)

高熱が出て寝込む。

数日後、広瀬に呼び出され大倉の店へ。大倉が薬物で入院し、店も閉めることになったと告げられる。龍先輩から久保が香織の件に無関係だったことを知らされる。

この日付については、この後に出てくる

朝まで街を歩きながら横井を探す生活は、すでに三日目に突入していた。

という記述との関係を考慮すると、「三日目」である11月5日(日)に横井に会うので、この日は11月3日(金、祝日)に確定される。つまり、この日に大倉の店(閉店)を出てミナミの繁華街を歩き、朝まで横井を探す(1日目)。土曜日も夜から朝まで街を歩き横井を探す(2日目)。そして日曜日の夜(3日目)、阪神タイガース日本一決定の夜に、横井を見つけるのだ。

11月5日(日)

朝、会計事務所の代表から「昨夜配信された不倫動画に関する事実確認」について長文メールが届く。

夜、横井を探して道頓堀を歩いていると定ちゃんから「阪神、優勝すんで。」と声をかけられる。この時点では「まだ試合途中」である。

この日に行われた2023年日本シリーズ第7戦阪神オリックスは7-1で阪神が勝ち、試合開始時間は18時34分、試合終了時間は21時間44分。

定ちゃんとの会話はたぶん21時ころで、戎橋の三角公園で「ありがとうございました!」と集団(阪神会)で咆哮していた横井の姿を見つけたとき、すでに彼は川に飛び込んだ後だったから、優勝後のひと騒ぎが済んだ深夜0時過ぎくらいではないだろうか。

この小説の最大のクライマックスである横井との対話、ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟』の「大審問官」にも準えられるべき緊張感のあるやり取りの後、横井が久保の車に拉致されてこの日は終わる。

11月12日(日)  

7日後、退院した大倉と広瀬の3人で横井の病院に花を手向けに訪れ、「生きとるわ!」でラスト。最後の一行に痺れる。

僕達は憂鬱な笑いを抱えたまま、歩いていつもの街を目指した。

というわけで、見事に小説内と現実世界の時系列同期に成功!!

別に作品の完成度や評価とはまったく関係ないことやが、個人的にスッキリした。