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ネット

鳥居みゆきはインターネットがなければ生まれなかったという意味で初めてのネット芸人ではないだろうか。 もちろん、ネットがなくても鳥居みゆきという芸人自身は存在しただろう。しかし、ここまで多くの人間を虜にする存在にはなれなかったに違いない。 鳥居みゆきの中毒性は、ネットの中毒性に通じるものがある。ネットのヘヴィーユーザーであればあるほど、重度の鳥居みゆき中毒患者となる可能性は高い。 ネット動画では、一度見ただけでは分からない彼女のコントやトークの中の小ネタを何度も見て確認することができる。動画には、オチの意味がわからない人や知識のない人のために解説まで付いている。意味がわかったときには、誰もがその発想や知識の豊かさに驚かざるをえない。 そしてネットでは、いわゆる地上波のテレビやラジオでは流せないきわどい内容も放送できる。鳥居みゆきの最大の魅力である危険でブラックな笑いはネットでこそ最大の威力を発揮する。 さらに彼女の場合、ネットにおいてそのビジュアルの魅力が最大限に生かされている。ネット動画で見ることのできる、過去に撮影された、従来の女性芸人ではありえないレベルのグラビアの映像は、彼女自身の意向とは別に、鳥居みゆきのカリスマ的な人気を高める要素となっていることは間違いない。

そして、ラジオとは違い、ネットのトーク番組では、パーソナリティの顔や表情を見ることができる。GYAOで見るトーク番組中の鳥居みゆきは、時折溜息が出るほど美しい表情を見せる。ラジオではなくネットこそが彼女の魅力を100%伝えることができる。

また、ネット動画で見ることのできる「妄想結婚式」や「妄想葬儀」や「数子」などの一人芝居は、マサコネタと車の両輪のようにして、鳥居みゆきの芸人としての確かなキャリアと実力を伝える道具になっている。あたかもピカソの抽象画を見て戸惑う人が、彼の青年時代の写実的な絵画を見てその才能を確認するかのように。

このように、インターネットはあらゆる意味で鳥居みゆきにとって最高の表現媒体であり、違法なアップロードすら含む現在のネット状況は、鳥居みゆきという才能を知らしめるためには最良の環境であるといえる。 しかし、この蜜月期間はいつまでも続くとは限らない。「ユーチューブ専門」芸人が表舞台で認知されるためには、必然的に地上波メディアとの葛藤と相克を経なければならない。その過程で、何が失われるのか、または新たに何が得られるのか。これから鳥居みゆきは注目すべき段階を迎える。 先日のエンタの神様出演が呼んでいる波紋はその前哨戦にすぎない。