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おおかみこどもの雨と雪

小学3年の娘が見たいというので、話題作『おおかみこどもの雨と雪』を見てきた。

夏休み中で、劇場はかなりの入りだった。子供たちも多かった。一般的にはジブリ作品と同じような感覚でとらえられているのだろう。

この作品にかなり賛否両論あることは知っていたし、そんなに期待もしていなかった。子供が喜べばいいや、という気持ちだったから、見終わった後も、まあこんなもんかという感想だった。内容はいまいちだけど絵がきれいだったからまあいいか、くらいの。

家に帰ってネットでレビューを見てみたら、称賛の声もある一方で、かなり激烈な批判も目に付く。個人的には批判の声の方に共感するところが多い。期待して見に行ったらこういう気持ちになるかもしれない。

一番気になったのは、ファンタジーとリアルのバランスがよくないことだ。現代日本のリアルな風景を精密に再現する一方で、ファンタジーがそれとは無関係に展開されるために、どうしても違和感がつきまとう。

ストーリーについては、最後まで「おおかみこども」は何かのメタファーなのかなと考えながら見ていたが、どうもしっくりくる説明が思いつかなかった。この作品は特に倫理的な問題を提示することを意図していないと思わざるを得なかった。

「狼男」や、「おおかみに育てられた少女」のような過去の作品または物語との関連性も明確ではない。ただ変身譚の対象がオオカミであるというだけで、それ以上の意味はないとしかいえない。

だとするとこの作品は何が言いたいのか。そう考えてしまうと、批判者の指摘するさまざまな作品の欠点が目に付いてしまい、評価できないということになる。

何も考えずに、そのときどきの主人公(ハナ)の行動をすべて無批判に受け入れて、共感することができれば、楽しむことはできるのだろう。現にうちの子供はそうしていたようだ。

しかしこの作品を無条件に子供の受け入れるものとして肯定してよいかとなると、また別の疑問が生じる。

問題作、というほど大げさなものでもないが、良作アニメとして片づけることもできない、なんとも「びみょ〜」な作品だと思った。

以前「ポニョ」を見たときにも同じように思った。

最近のアニメはスタンダードの軸が歪んでないか。王道は王道として存在してほしいものだ。

最後にまったくどうでもいいがハナの部屋の本棚にちくま文庫の『神智学』があったのがなぜか印象に残った。