War Is Over

 if you want it

菜食主義者

1970年生まれの韓国の女性作家ハン・ガン菜食主義者という小説を読んだ。

彼女の『そっと静かに』というエッセイ集を読んだことがあって、小説自体についてはまったく予備知識のない状態で読んだ。

文章自体は読みやすく、展開もスリリングで一気に読んでしまえたのだが、内容は何とも言えず重くずっしりと来る。

韓流のドラマや映画にも通じる、剛速球でど真ん中に来る感じ。

主要な登場人物は二人の女性と二人の男性で、それぞれの視点から描かれていて、誰に感情移入するかで感想は変わってくる。

個人的には、主人公の女性(悪夢を見て肉食を拒絶するようになり、やがてそれがエスカレートして食事を一切拒み最終的には植物と同化することを望むに至るが当然周囲からは理解されず精神病院に送られる)が現実にいる存在とタブってしまい、最後の章は読み進めるのが苦しかった。

男性の一人は主人公の夫で、俗物だが常識的な会社員であり、妻の行動が理解できず離婚する(第1章)。もう一人の男性は主人公の義理の兄で、芸術家(映像作家)であり、主人公の中に欲望とないまぜになった芸術的衝動を覚え、その行動はエスカレートして、主人公を巻き込んだ破滅に突き進む(第2章)。

主人公の姉がもう一人の人物で、3章からなる小説の最終章は彼女の視点で描かれる。主人公の内面が最後まで不明なのに対して(幼少時代のトラウマによるものという解釈は可能だが彼女の行動を説明するにはそれだけでは表層的すぎる気がする)、真っ当に生きようとしながら狂気の淵に立たされる姉の独白には作家の内面が最もストレートに吐露されているようにも思える。

韓国の現代小説を読んだのは初めてで、日本の文学では味わえないリアリティの一端に触れたような気がした、という適当な感想でとりあえずお茶を濁しておく。