INSTANT KARMA

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備忘録

12月に読んだ本

 

『知的生き方教室』中原昌也

菊地成孔が面白いと言っていたので読んだ。

前半は「?」だったが、後半に行くにしたがって面白くなってきた。高橋源一郎の小説と似たテイストを感じた。筒井康隆にも通じるものがある。

小説には世の中を変える力はないとよく言われるが、少なくとも読者の世界認識を変えることを通じて読者の言動を変える力はある。その力を持つかどうかが、純文学とエンタメ文学の違いではないかと思う。そういう意味ではこの小説は純文学といってよいのではないかと思う。少なくとも自分の意識状態(世界認識)が、この小説を読む前と読んだ後では微妙に変化したので。

個人的に最も驚いたのが、著者が「暴力温泉芸者」というバンド(ミュージシャン)であったのを知ったこと(ずっと気になる存在だったのに今まで知らなかったこと)と、自分と同い年であるのを知ったことだ。

日本の純文学は中原昌也だけあればいいという菊地成孔氏の見解はいささか極端な気がするが決して誇張とは言えず、この小説がベストセラートップになればこの国は滅びるという彼の意見には思わず頷かざるを得なかった。

 

『なんとなく、クリスタル』田中康夫

菊地成孔がラジオ番組で朗読していたので読んだ。

余りにも有名な作品だが、この年になるまで手に取ろうと思ったことは一瞬たりともなかった。

その後の田中康夫という人物の生き様を知ったうえで読むとなかなか興味深いが、当時この小説がベストセラーになった時には『ケッ』の一言で済ませていたし、現にこの年になるまでまったく読みたいとは思わなかった。でも読んで面白かった。菊地成孔のお蔭だ。田中康夫と言えば『噂の真相』に連載していた「ペログリ日記」のイメージが強く、その後長野県知事になって「脱ダム宣言」をしたり神戸震災でボランティアをしたりしているのを見て見直した記憶がある。今一番信頼できる政治家の一人である。ヤスオちゃんが日本の首相になればいいと本気で思う。

田中康夫こそ、「予言者」或いは「幻視者」と呼ぶにふさわしい「時代の子」であると思う。

これから『33年後のなんとなく、クリスタル』を読み始める。

 

ユリイカ 坂口恭平特集』(青土社

『独立国家のつくりかた』から『幻年時代』、『現実脱出論』、『家族の哲学』へと内向していく坂口恭平を追いかけなくなってしばらく経ってしまっていたが、この特集を読んで、もう一度取り組んでみたいと思い直しつつある。