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リベラリストの死

『悪霊』の登場人物の中で、最もよく描けているのは、スタヴローギンや他の人物よりも、ステパン氏であるという説は有力だ。

 

西欧(フランス)かぶれのリベラリストだが、偽善的で腰の座っていない姿勢を、自らの教え子である、より過激な自由思想をもつ下の世代から突き上げをくらう、という様子が、実にリアルに描かれている。

 

ステパン世代も、その息子であるピョートル世代も、大地とか民衆とのつながりを欠いている、という点では共通している。

 

実はそのことは、日本のリベラルや左翼にも言えることではないか。彼らは、民衆の中に真の基盤を持っていないから、彼らの志向する改革や革命は敗北を運命づけられている。

 

ロシアで成功した共産主義革命が20世紀最大の悪夢であったこは歴史が証明している。

 

ステパン氏のキャラクターには、ワルワーラ夫人との20年以上にわたる友情、というもう一つの側面もある。

 

二人の関係はプラトニックなもので、ステパン氏の死に至るまで二人の友情は高潔なままであった。

 

しかし、ほんの一時期、二人の関係が一線を越えそうになったことがあった。

 

ワルワーラ夫人の夫であるスタヴローギン中尉が死去したという知らせを受け(夫婦は既に4年間別居していた)、ふさぎ込んでいた時期、ワルワーラ夫人を慰め、大切な心の友となったのは、ステパン氏であった。

 

このとき、ワルワーラ夫人は、「わたし、このことはけっして忘れませんからね!」という名セリフを吐いている。

 

「このこと」とは一体何なのか?