映画「ハッピーアワー」テキスト集成であり、濱口竜介監督がみずからその成立過程を解き明かした本、『カメラの前で演じること』をとても興味深く読んだ。
ほとんど演技経験のない俳優たちを使って5時間を超える映画を撮って、それがなぜあれほど、プロの俳優たちにも出せないリアルさのある世界を描き出せたのか、その魔法の種明かしを監督自らがやってみせている。
彼の語り口は、知的誠実さと謙虚さを感じさせるので、その種明かし自体が静かに感動的なドキュメントになっている。
だが難しいのは、監督自身が認めている通り、この「ハッピーアワー」の方法とは、「何よりこのとき集まった演者・スタッフなどのメンバーひとりひとりが方法をもちよってできた一度きりの、固有の方法なのだ」ということであり、この方法に従ったからと言って必ず傑作が生まれるというようなものではないということだろう。
三浦哲哉著『「ハッピーアワー」論』も今読んでいるが、とても面白い。