INSTANT KARMA

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I won't do what I can't do

佐久間宣行「できないことはやりません テレ東的開き直り仕事術」(講談社という本を読んだ。

自分は「ゴットタン」も「ウレロ」も知らないし、佐久間宣行のオールナイトニッポンも聞いたことがない。ただアイドルグループ「ラフ×ラフ」の生みの親として、また永松波留をオーディションで選んだ人物として知っているだけだ。

それでもこの本は興味深った。読み始めると引き込まれてあっという間に読み終えてしまった。

劇団ひとりおぎやはぎバカリズムを見出し売り出した人だから、面白い人を見つけ、それを世の中に紹介する才能があることは確かだろう。

お笑い番組スペシャリストだけに、アイドル(ラフラフ)もお笑いの路線で売って行こうとしているが、それは一種の冒険だと思う。でも売れる前のももいろクローバーや売れた後のAKBグループとも仕事しているから、王道アイドルの売り出し方についても見識を備えているに違いない。

バカリズムアイドリング!と一緒にやっている番組は見たことがある。それは非常に面白かった。一級のバラエティ番組として笑いながら見れた。

ラフ×ラフは佐久間が秋元康と一緒にやった「青春高校3年C組」という番組がルーツになっている。この番組にアイドル部で出演していた日比野芽奈、西村瑠香、大曲李佳、前川歌音、齋藤有紗の五人が佐久間にDMを送ったことが出発点になっている(実際に送ったのは斎藤で、日比野は前川が送ったと勘違いしていたため一時険悪な雰囲気になったこともある)。

今後の活動について相談を受けた佐久間は、彼女らの本気度を見るために個別に話し合い、五人に佐久間、吉田豪竹中夏海の三人の前でパフォーマンスさせ、いろいろ考えた結果、この五人を含めて広くオーディションを行うことを決める。

オーディションの結果、九名が選ばれ、元青春高校のメンバーから最終合格したのは日比野と齋藤の二人で、他の七名はオーディションからの参加者だった。

佐久間は自分からアイドルを手掛けたかったわけではなく、あくまで五人からの相談に応じてアイドル・プロデュースに乗り出したのだという姿勢を取っている。それでもやるからには本気でやる、そのためには自分が本当に面白いと思える人たちを揃えてやりたいと思ったと言っている。

このオーディションの模様は、五人の相談の場面からすべてYoutubeに動画コンテンツとして上がっている。

タイミング的に、佐久間がテレビ東京を辞めてフリーになったことで、テレビ局や番組とは離れてアイドル・プロデュースに専念できる体制になったということが大きい。どこまでが計算(企画)でどこまでがリアルなのかということも含めて、発端からデビューまでが一つのドキュメンタリー風に仕上がっている。

佐久間はアイドルのプロデュースに乗り出すにあたり「青春高校」で協働した秋元康に相談しているはずで、秋元からどんな助言を与えられたのかも気になるところである。ちなみにラフラフのデビュー曲「100億点」の作曲はAkira Sunset、野口大志であり、秋元康の坂道系アイドルの楽曲を多く手掛けている。

佐久間はデビュー曲の歌詞を書いている。今後も書き続けるのかどうかは不明だが、この歌詞については「メンバーに当て書きするように作った」と述べている。

オーディションを受けている彼女たちが自信を持てずにネガティブになっている様子を見て、励ますような歌にしたという。メンバーを見て彼女たちの状態に合わせて書くという秋元康のAKBGの歌詞の作り方と共通するものがある。

最終的に選ばれたメンバーを見て、審査員として参加した吉田豪は「もっとバラエティ寄りの人選にするのかと思ったら意外とガチ(正統派アイドル)だった」と感想を書いている。確かに、お笑い路線に振り切るなら違う人選もあり得たと思うが、わりと正統的なアイドル風の可愛いさを持つメンバーを揃えた感じである。その分、このメンバーでバラエティに特化することはやや厳しいように思える。むしろできないことに挑戦して頑張っているアイドルを保護者目線で見守るという、本来のアイドルファンの立ち位置が求められているように思う。

 

さあ、次は「佐久間宣行のずるい仕事術――僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた」を読もうか。