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AV女優

吉田豪がどこかで絶賛してたのを思い出したので、立ち寄ったブックオフで見つけた永沢光雄「AV女優」(文春文庫、1999年)を買って今読んでいる。

全然予備知識がなく、AV女優を取材して書かれた「現代社会の光と闇」を暴く系の社会派ルポタージュかと思っていたら、「ビデオ・ザ・ワールド」と「AVいだてん情報」に連載していたインタビュー記事ということで、シリアス方面には走らず、ちょっと軽いノリもあり、吉田豪のインタビュー本を思わせるものがあって、吉田豪がこれを評価する理由はよく分かった。

永沢はノンフィクションには興味がなく、もっぱら小説が書きたかったようで、この本の中にも小説風の文章が出てくる。しかし念願の小説を書き始めて間もなく、病魔に侵され、アルコール依存症鬱病もあって、47歳でこの世を去った。

今でこそAV女優のプライベートな部分についての取材などはタブーでもない気がするが、この当時(1990年代前半から後半にかけて)はもっぱら男の欲望を満たすための消耗品でしかなかった彼女らの生い立ちにスポットを当てた記事は珍しかったのかもしれない。

親が離婚し、養父や親戚から性的虐待を受け、貧困から抜け出すために水商売に入るといった背景を持つ女優がほとんどだが、永沢の目線は決して「上から」ではなく、ルポタージュの書き手にありがちな「対象を突き放す冷たさ」も感じさせない。

みんな頑張ってるんですよ。あの子たちは決して自分はこうだってことは言わないし、実はヘンな男にひっかかったりもしてるけど、頑張って生きてる。そりゃ生まれ育った条件は、父親がどうとか家庭が複雑とかいろいろあるけど、少なくともそういうところに<落ちてきた>なんて感覚はないわけですよ。なのに、AVに出てダメになった女の子たちを私はこんなに温かく見守っているんですよ、みたいな調子で書いている記事がやっぱり少なくない。なんだあ、これ、と思う

人間が落ちるのを書くルポってあるじゃないですか。精神病院の中に入ってみたり、いろんなところに潜入したり。そういうのって、あんまり好きじゃない。なんかさあ、人を見下してるんだよね。それで決めつけて書いてあるから。だったら、入らなくていいのよ、そんなところに。

ほら、人と会うことって、絶対、変わることでしょ。変わることを畏れずに受けとめてゆけば、文章も変わってゆくし、それを喜びとしなきゃいけないのに、ね

こういう精神は、今の吉田豪のアイドル・インタビューなんかに受け継がれているのを感じる。

それにしても、この本に出てくる女優たちは皆それぞれに個性的で、人間としてとても魅力がある。五十代になっている彼女たちは、今どこでどんな風に生きているのだろう。