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「BUBUKA2023年10月号」に掲載されている吉田豪坂本慎太郎インタビュー(15000字)を読んだ。

kindle版のコラムパックというのがあるので400円でダウンロードした。

こういう有料記事の感想というのは書きづらいしあまり書きたくないのは、ネタバレするなとかいうのがめんどくさいし、誰でも平等に手軽にアクセスできないものについて言及するのにちょっと抵抗があるから。

このインタビューの内容もあまり事細かに書かない方がいいのだろう(といってもそんなに目新しいことが書かれているわけでもなかったが)。

坂本が初期に大きな影響を受けたというマリア観音というバンドは学祭のステージに来たのを覚えているが演奏自体は覚えていない(倉地久美夫も来ていた気がする)。

ミディという会社とメジャー契約したゆらゆら帝国はカルト的人気を博し、国内のロック・フェスでトリを務めるまでになるが、坂本は芸能界的なノリを徹底して避け、次第に自分のやりたいこととの乖離を感じ居心地の悪さが拡大していったという。鬱になりかけて吉田豪のクイック・ジャパンの連載(のちに「サブカルスーパースター鬱伝」として書籍化)を読んで参考にしていたという。

2010年初めにゆらゆら帝国は解散。その後は音楽に関係のない仕事につくことも考えたが、宅録のようなパーソナルな音楽を作るようになってソロアルバムを出したら好評で、そのまま現在までマイペースな活動を続けている。

とにかく「有名になりたくない」「人前に出たくない」ということで、好きな人に作品だけ聴いてもらえる今の状況が一番いいという。

坂本ができるだけストレスを感じないで「逃げ切りたい」という感覚はすごく共感できる(しかし自分には坂本のような才能がまったくないので逃げ切れるかどうかは不明。たぶん逃げ切れないと思う)。

このインタビューにも出てくるが、坂本慎太郎のアングラ感覚に一番近いのはやはり早川義夫ジャックスで、日本のロックの中でもひとつの特異で重要な位置を占めている。この感覚は岡林信康らに代表される60年代末~70年代のアングラ・フォークが纏っていたものでもあったが、今の日本の音楽からはそういった要素はかき消えてしまったように思う。

坂本慎太郎の音楽には、ほかにもサイケデリックな要素やシュールレアリスムアヴァンギャルド、妖怪、ホラー、狂気、異世界などいろんなものが混然一体になっている。いまやその手のものを一手に引き受けているような印象すらある。

やはり坂本慎太郎が「逃げ切る」ことができるかどうかは他人事ではないような気が勝手にしている。