家の前で凄い悲鳴のようなものが聞こえたので見に行ったら狸が取っ組み合いの喧嘩をしていた。それはもう喧嘩というような領域を超えて正しく死闘であった。二匹がどこかへ行った後には、流血の飛沫と体毛が玄関先に散乱して在った。
久しぶりにマジメな本(?)が読みたくなり鶴見俊輔集5「現代日本思想史」を図書館で借りてくる。
鶴見俊輔の本をきちんと読んだことがなかったが、リベラルで、それも腰の抜けたリベラルではなくて「社会の良心」的な洞察を持つ人だという印象を勝手にもっていた。
この選集の月報に寄せられた吉本隆明の文章の冒頭に
鶴見俊輔さんのいちばんの特徴は「叡知」だと思う。
この「叡知」の意味は、知識と、仏教でいう慈悲に近いものと、洞察力とが融けあった水の流れのようなものだ。…わたしも嘗てそうだったが同時代のものは鶴見さんからいつどこでも<わかられている>という安心感を持つことができたのではなかろうか。
あれが「叡知」のひかりで、かれ以外の誰からもあのブリリアントなひかりが射し込む感じはなかった。
と書いてあるが、自分の印象もまさにそんな感じだったので、安心した。
今の日本には、こういう「叡知」を持つ人がどこを探してもいない気がする。
それは今の世の中、とくに言論の世界ががネットやSNSで殺伐としすぎているせいなのか、彼のような人がいないから殺伐としているのか。
そしてこの殺伐とした状況のままふたたび戦争に巻き込まれていくのだろうか。