INSTANT KARMA

We All Shine On

狂暑雑言

ジャニーズ事務所の再発防止特別チームによる報告書が公表され、記者会見も開かれた。報告書はジャニーズ事務所のホームページからダウンロードできる。

特別チームの構成は、座長に元検事総長の林眞琴氏が就き、精神科医の飛鳥井望氏、臨床心理士の齋藤梓氏の3名であるが、調査補助者としてアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業の弁護士6名が特別チームの事務局を務めている。

実質的に報告書を執筆したのはこの弁護士らであろう。彼らは当然国連人権員会のヒアリングとその結果としての記者会見の内容を知っており、ジャニー喜多川の行ったことが海外からどう評価されるかについての国際感覚も備えている。事務所関係者や国内のメディアへの忖度をほぼ感じさせない内容の報告書が出来上がったのはそれによるところが大きい。

加えて、「どうせお手盛りの報告書しか出来ないだろう」との、ジャニーズ訴訟で文春側の代理人を務めた喜田村弁護士の見解に代表される国内の厳しい目が特別チームには一定のプレッシャーになったとも推察される。

それでも座長の林氏は、記者会見において、ジュリー社長の「知らなかった」発言を庇う様子を見せたり、広報責任者の白波瀬氏を免責するような発言を行うなど、事務所側に「配慮」する様子も見せた。

ニュースでは報告書の中でジュリー社長の退任が勧告されたことが大きく報じられたが、ジュリー社長は責任追及の矢面に立つのを恐れて既に辞めたがっていたとの報道もあり、この点だけを見ればそれほど大胆な提言ともいえない。むしろ「被害者の会」からは「辞めずに被害者救済を全うすべき」との声も上がっている。

それより注目すべきは「マスメディアの沈黙」と題された部分で、マスメディアがジャニーズ事務所を恐れ、まともに報道してこなかったことがジャニーの性加害を助長させ隠蔽体質を強化させたと指摘している。このことは先の国連人権委員も会見で指摘していた。

この部分への対応として、国内のテレビ局各社が意見を公表した。いずれも「人権侵害が起こらないようこれからも適切に対処していく」といった中身のないステートメントであり、メディアが自らの責任を放棄してジャニーの性加害を助長してきたことへの反省の欠片も見られるものではなかった。

本来の真摯な対応が必要であることを知るならば、全てのテレビ局は、一旦ジャニーズ事務所のタレント起用を全面的にストップすべきである。今後もテレビ各局が、ジャニーズ事務所の「解体的出直し」を自らの責任において確認することもなく、従前通りジャニーズのタレント達を起用し続けるのであれば、既に日本の人権感覚に大きな疑念を抱いている諸外国から更に重大な非難の声を浴びること必定であろう。

ジャニー喜多川メリー喜多川という二人の「実行犯」が死んだ後になって初めて、しかも外国メディアの取材によってしか、このような動きが生じ得なかったこと自体が恥ずべき事実であり、この国には自浄作用というものが完全に欠如していることを示している。この自浄作用の欠如はひとり芸能界にのみ限ったことではないだろう。

執行できない判決文が紙切れに過ぎないように、実行を伴わない報告書はチリ紙のようなものに過ぎない。ジャニーズ事務所がこの報告書を受けて具体的にどんな行動を取るのか、また「共犯」とされたマスメディアが具体的にどんな行動を取るのか、何の期待も持たずに見守りたい。