INSTANT KARMA

We All Shine On

Sacred Monster

今日はマリア・カラスの伝記を読んでいた。

アンジェリーナ・ジョリーの主演で映画化が進められているそうだ。

なぜ急にマリア・カラスに興味を持ったのか自分でもよく分からないが、たぶん数日前にテレビでエイミー・ワインハウスのドキュメンタリーを見たことと関係してるんじゃないかと思う。

かたや二十世紀のオペラ界のレジェンド、かたや二十一世紀のポップ(ジャズ)シンガーということで単純な比較対象にはならないが、何となく共通するものを感じたのかもしれない。

唐突だが、自分は押しが強くて性格のキツい女性が非常に苦手である。

以前そういうタイプの人と同じ職場にいたときは、人生で初めて胃潰瘍になった。

何というか、近くにいるだけでダメージを受けるのである。

いわゆるヤンキーというのとは違って(ヤンキーはむしろ好き)、王道キャリアウーマンタイプで、自分が常に場の中心にいることが無条件に認められることを前提に生きているような人。そういう人の半径5メートル以内に近づくことさえ苦痛だ(お互い様かもしれないのだが)。

だがそういう人は、意外とちょっとしたことで崩れたり泣いたりする。プライドが膨張してパンパンに張っているので、小さな尖ったものに触れるだけで破裂する。

今時こんなことを書いたらジェンダー的にマズいのだろうか。それは決して女性に限ったことではないのだが、とフォローしておく必要があるか。

マリア・カラスという人は、そんな中でもプライドの塊の女王の中の女王、まさにモンスターのような存在で、その影響圏はほとんど宇宙レベルに達している人という感じである。

竹取物語」の分析をライフワークにしている知人によると、マリア・カラスは「かぐや姫」と同じで別の惑星から来た魂だそうである。

なぜ彼女がわざわざ地球にやって来た(生まれた)のかというと、地球人には出せない波動を生み出すためだったとか。どうせ嘘だけど面白いと思ったので書き留めておく。

1950年に、マリアはメキシコでコンサートをしている。そのオペラ「アイーダ」で、彼女は伝説的な「Eフラット」を挿入した。

これはヴェルディの原曲にはない音で、メキシコの一九世紀の有名なソプラノ歌手、アンヘラ・ペラルタが使ったとされる。

舞台稽古の後、マリアは劇場の支配人からアンヘラ・ペラルタが使った『アイーダ』のスコアを見せられ、「この高いEフラットを歌ってくだされば、聴衆は熱狂しますよ」と言われた。

マリアは少し驚いたが、にっこり笑って答えた。「無理ですよ。それはヴェルディが書き込んだ音ではないし、不適切ですもの。それに、指揮者やほかの歌手の承諾を得ないといけませんし」

アイーダ』の第一幕が終わるまでは、ことはそれ以上進展しなかった。

ところが、幕間に共演しているバス歌手、モスコーナがマリアの楽屋にやってきて、テノールのバウムという歌手が高音にこだわっているのが困りものだと相談をもちかけてきた。マリアは、舞台稽古中にバウムとやりあったことがあり、バウムの喧嘩腰の姿勢に腹を立てていたので、すぐにほかの歌手たちに、高音のEフラットを歌ってもかまわないかどうかをたずねにやった。(それを知らされなかった)バウム以外の全員が乗り気だということが判ると、マリアは承知したとばかりに、第二幕のフィナーレ部分で思う存分「Eフラット」を歌い上げた。

聴衆の熱狂は予想をはるかに超え、圧倒されて拍手喝采がいつまでも鳴りやまなかった。翌年のメキシコ公演でもマリアは同じことをして聴衆を興奮させた。

バウムは「お前とは二度と共演しない!」と腹を立てたものの、すぐに和解して様々な国で共演している。

彼女の後、他のソプラノ歌手もこの音を挿入するようになったが、マリア・カラスほどの圧倒的な響きをもたらした人は誰もいない。

youtu.be

マリアは歌手になった頃には110キロの体格だったが、1954年に50キロ減量した。

それはマリア・カラスに世俗的な成功をもたらす大きな要因となったが、

一説にはこの過度な減量が彼女の歌手生命を縮めたと言われている。