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Hard Times Are Over

ジョン・レノン&オノ・ヨーコ  プレイボーイ・インタヴュー1980完全版(デヴィッド・シェフ、 山川真理訳、シンコーミュージック、2020年)

原題は All We Are Saying: The Last Interview with John Lennon and Yoko Ono

著者(インタビュアー)のDavid Sheffは2008年に刊行された『ビューティフル・ボーイ』が有名で、後に映画化もされた。

これは『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』に掲載されたシェフの記事"My Addicted Son"(私の依存症の息子)を元にした作品で、薬物依存になり、そこから回復した自身の息子ニックについて書いたノンフィクション。

2019年1月には、ニックとの共著による"High: Everything You Want to Know About Drugs, Alcohol, and Addiction"を刊行し、ミドルスクールの生徒向けに薬物やアルコールの依存症についての情報を提供した。2019年には、薬物使用障害に対する質の高い、根拠に基づいた治療を、必要とする人が受けられるようにし、依存症医学の研究を支援するための慈善団体、『ビューティフル・ボーイ財団』を設立した。

この本(プレイボーイ・インタヴュー)の序文で、シェフはこう書いている。

ジョンとヨーコが世界に向けて示し、私にも見せてくれたような仲のいい姿は、フィクションだったのではないかと主張する人もいる。

だが、それは誤りだ。私は二人の間にあふれる喜びや愛情を、直接目の当たりにしたのである。愛し合ってることがここまで明確な二人の人間と一緒に過ごした経験はほかにない。彼らが自分たちの愛情を表現するのは、言葉だけではなかった。お互いに対する接し方、たとえば見つめ合う視線などからも、深い愛情がはっきりと見て取れた。

シェフが序文で書いている通り、このインタビューはジョンとヨーコが二人であらゆる質問に率直に答えている。

最初の章の、ヨーコと一緒にいる時のジョンは、少し遠慮しているように思える。一人になって、ビートルズを再結成しないのか、としつこく尋ねられた時に、それがいかに無意味でくだらないことかを述べ立てるマシンガントークを読みながら、これがジョンだ、と思った。

シェフも、わざとジョンを挑発するような質問をする。「あなたはリバプールの労働階級出身の成り上がりのくせに、大金持ちになって良心が咎めないのか」とか(もちろんそんな言い方はしないが)、「〈所有物などない〉と歌っていながら自分の生活に矛盾を感じないのか」とか。それに対するジョンの答えも見もの聴きものだ。

有名なヨーコの個展での出会い(「YES」)についてジョンが語っている章では、ヨーコがこんなことを言う。

けっきょく、私はどこまでも楽観的な人間なんだと思うわ。世の中には「ああ、世界はもうすぐ終わろうとしている、だから子どもは持たない」と考える人たちもいる。そういう人たちに言いたいわ。もしあなたたちが失うことを恐れていたら、失ってしまうでしょうね。でも、まわりを見てちょうだい。私たちは世界がどんなに素晴らしいかについて話しているけど、ほんとうにそのとおりなのよ。

このインタビューは、シェフがジョンに連れられて『ダブル・ファンタジー』をレコーディングしているスタジオに行って、ヨーコの歌う Hard Times Are Over を収録する風景を見学するところから始まる。

「これぞまさしく、世界で初めての日本のゴスペル・ソングだ」とジョンは言った。

ジョンがヨーコの方を見やると、彼女の目には涙があふれていた。ジョンは椅子の背もたれに寄りかかって向きを変え、ヨーコの肩に腕を回した。「とてもいいよ、マザー」と言われるとヨーコはうなずいて、とめどなく流れる涙を袖口でぬぐった。