ハイデガーの文章はまったく理解できないが、ハイデガーの考えていたこと(というより直観したこと)の大本になるアイディアはなんとなく分かる気がする。
だからもう少し付き合ってみたい。
リルケ「詩人について」より
漕ぎ手たちは私に向き合っていた
漕ぎ手の数は16人
彼らの目はなにも見ていないことが多かった
見開いた目から
視線が大気に吸い込まれていく
しかし、ときにふと気づくと
漕ぎ手の一人が沈思していた
自分に直面する、あの偽装した奇妙な現象について
そして、その現象の本質を露わにするかもしれない、
おこりうるさまざまな状況について
気づかれると、漕ぎ手はただちに、その深い思索的表情を消す
一瞬、あらゆる感情が混乱するが
漕ぎ手はできるかぎり素早く、周囲をうかがう獣の目に戻る
そしてやがて、美しくも真剣な表情が再び
チップをねだる、いつもの愚かな顔に変わる
いつなんどきでも、屈辱的な感謝の表情に
顔をゆがめる準備が整って