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passion

濱口竜介監督「PASSION」(2008年)が下北沢の劇場で上映されていたので見に行った。

正直、映画としてはイマイチ乗れなかったが、濱口監督のフィルモグラフィーを押さえる上では大いに参考になった。

「PASSION」は、2008年東京芸術大学修了制作で、海外の映画賞にも出品し、高い評価を受けたという。後の作品(特に「親密さ」)の原型のようなシーンがいくつか出てくる。

ヒロインの教師が学校の教室で「暴力」について論じあうシーンは「親密さ」の後半の演劇での「暴力」という詩を連想させたし、男女が夜明けの街を語り合いながら歩くシーンも「親密さ」に出てくる。

男二人女一人が激しく応酬し合う「本音ゲーム」のシーンは白熱の場面で、これが濱口の作家性が最も表出された部分だろう。

映画全体としては完成度の点でやや物足りない(特に後半から終結部にかけて)。後の「ハッピーアワー」「ドライブ・マイ・カー」などの傑作を知っているだけにこの評価はやや酷かもしれない。

「偶然と想像」に出演していた河井青葉、占部房子、渋川清彦が出ている。十四年前の彼女たちの姿と演技ぶりはなかなか興味深かった。