以下ヤフーニュースより転載
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濱口竜介監督、ベネチア映画祭受賞会見でインボイス制度について問われ「ごくシンプルに、嫌」
ベネチア映画祭(イタリア)で審査員グランプリ(銀獅子賞)を受賞した「悪は存在しない」(24年ゴールデンウイーク公開)の濱口竜介監督(44)が帰国し12日、都内の日本外国特派員協会で、主演の大美賀均(おおみか・ひとし=34)とともに会見を開いた。
質疑応答の最初の質問で、フランスのメディアから、10月から開始予定のインボイス(請求書)制度は、映画業界にとっても影響、懸念はあるか? と質問が出た。
映画やアニメの製作者はフリーランスが多い。これまでは年間の売り上げが1000万円に満たない小規模事業者は、売上にかかる消費税の支払いは免除されてきた。ただ10月に導入されると、フリーランスの製作者がこれまで通り免税事業者のままでいると、消費税を納めたことの証明となるインボイスを発行することができず、取引先は取引で生じた消費税を控除できなくなるため、仕事が減らされる可能性がある。一方で、インボイス発行のために課税事業者になると、10%の消費税を負担しなければならず、廃業の危機を訴える人も少なくない。
濱口監督は
「自分自身もフリーランスの監督ですので、この制度のことは、人ごとではないと思っています」と語った。「ただ、お恥ずかしい話ですけど、この制度のことは結構、重要な問題らしいと、いろいろな記事を読んだりしているんですけど、よく分からないというのが、すごく正直なところ。一体、何でこういうことをしなくてはいけないのか、何が問題なのかというのも、あまり、よく分かっていないのが、1つのポイント」
と、率直な感想を口にした。
その上で
「この件に関しては本当に、感情的な側面でしか言えないんですけど…ごくシンプルに、嫌だなと」
と語った。さらに
「本当に、こんなことが必要なのですか? ということを行政の人には問いたい。何度も説明していますということだと思うけれど、それでも合点がいかないから質問するんだと思う。非常に我々は今、困っているのは確かなことだと思う。確かな情報が十分に与えられない中で、生活の糧をむしり取られているような感覚は持っている」
と続けた。
米国の映画界では、7月14日から全米俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキが展開されているが、その状況を踏まえ
「いつか、何か…まぁ、米国ではストライキとか起きてますけど、そういうことにも繋がりかねないような何かではあるんですよ、ということは申し上げたい」
と、フリーランスの製作者にとって、死活問題であることを強調した。
「ごくシンプルに、嫌」という表現に全面的に共感した。
この制度には、単に税収のために制度を改変するということ以上に、何か狡猾で、悪だくみの臭いがして、生理的に嫌悪感を覚えている。だから登録したくないし、免税事業者だから登録してみすみす税金を取られたくはない。登録しろという圧力をかけてくる業者は逆に訴える。
この影響は、ボディーブローのように、個人事業主以外の人々の生活にも響いてくるはずだ。現に10月から値上げする自営業者(理髪店とか)も身近に出てきている。
濱口監督はもう世界的に有名な映画監督なので、敢えてこんなことを発言する理由もないのだが、リスクをおそれずきちんと端的にコメントしてくれたことに感謝したい。
そして、この質問をしたのが海外のメディアだったというところが、また情けない思いがする。
「ハッピーアワー」以来その才能に注目してきた濱口監督の、「悪は存在しない」という映画も見るのを楽しみにしている。