War Is Over

 if you want it

事件が起きない僕の人生はどうやらまちがっている

上田晋也「経験 この10年くらいのこと」岩井勇気「僕の人生には事件が起きない」を立て続けに読んだ。両書とも余りの面白さに圧倒された。

一昨年に、芥川賞受賞作を順番に呼んでいてウンザリしていたところに西村賢太私小説を読んでその面白さに衝撃を受けたときの体験に似ている。

上田も岩井も、いわゆるテレビタレントとして一線級で活躍しているお笑い芸人である。超多忙なスケジュールの合間を縫って月刊誌などに連載しているエッセイをまとめたものだが(一部書下ろしもあり)、そのクオリティの高さに唸らせられる。

どこまでライターの手が入っているのかは不明だが、読む限り、細かな修正に留まり、文章そのものは彼ら自身が書いているような気がした。

感心するのは文体のテンポの良さ。ぼくは彼らのテレビでの芸はほとんど見たことがないのだが、あたかも目の前で喋っているような生き生きした語り口に引き込まれる。

岩井については、本とほぼ同じ内容を喋っているラジオがyoutubeに上がっているので、参考に聴いてみたが、ぼくは本の方が面白く感じた。岩井自身があとがきで書いているように、文章の方が余韻や間を自由にコントロールできるからだと思う(ラジオでは相方の澤部のツッコミが却って妨げになっている場面が多い印象があった)。

上田は彼の得意芸である「説明ツッコミ」が時にくどく感じるときがあるが(本に収められている「昔話へのツッコミ」はそのくどさが鼻についた)、ハマるときには爆発的に面白く、本を読みながら爆笑に次ぐ爆笑といった具合になる。

岩井のような比較的若い芸人は、オードリー若林もそうだが、世の中を斜に構えて見る拗らせた視点を客観視することでうまく共感できる笑いに変えている。この手法はひとつの自己認識のやり方としても参考になるところがある。

対象を選ぶところのあるこうした笑いが広く深く支持されているということにある種の社会の成熟度というものを感じる。

同時に、彼らのあれほど面白い本をこんなにつまらない紹介しかできない自分の文才に絶望を感じる。

岩井勇気「どうやら僕の日常生活はまちがっている」もこれから読むのが楽しみだ。