2017.1.12 晴れ
なぜ結婚しないのか、と聞かれてもそれほど面白い返答ができないので、「結婚したいけどできない」と騒いで見せることがいかに正攻法かを思い知る。タレントとして生きるために「注意を払ってきた半生」を送ってきていないので、壇蜜として誰かを伴侶に迎えるにはあまりにも汚れているし重荷となってこちらも気が引けるというのが一番にある。引け目は卑屈さを生み、相手と向き合う時の汚れたフィルターになる。そして、猜疑心だけが強くなり、どんどん卑しくなっていく。あさましい女。
2017.2.3 晴れ
赤羽の飲み屋取材へ。十年ほど前駅前の皮膚科に世話になったという記憶のみがある。和菓子屋時代に世話になった北区在住の工場長がよく飲み歩いていたのが赤羽で、顔中に湿疹ができた私に「赤羽の皮膚科しか知らないけど」と遠慮がちに紹介されたのがきっかけだった気がする。私は世田谷区在住だったが和菓子工場は北区にあったので、家路とは逆になるが「まぁ、行ってみるか」と乗り込み、治療してもらい回復した。飲み屋メインの赤羽の顔を知らなかったが、賑やかで明るい。何故私は下戸なのか。
2017.2.10 雪→曇り
赤羽に住み赤羽で取材をし赤羽の漫画を描く男がくれた本を読む。男とは先日仕事をしたが、彼は「顔ばれはNG」という理由で顔をマスクで覆った状態で現れたため、いまだにどんな顔をしていたのか分からない。同世代、細身で酒浸り、心に大層大型の闇を飼っているような男。作品は赤羽で起きた出来事や自身の反省を描くものが多い。貰った本を読みきれば、男のほぼ全部の作品を拝読したことになる。
2017.2.16 晴れ
男は言った。一緒にいたい、と。久しぶりに言われたので胃が痛い。私は商品として生きている時間が長い。交遊はできてもその先はどうすればいいか自分でも分からないほどに空っぽだ。こんなに収入もあがり、金の余裕は心の余裕と言えるなと自覚していたのに、「男」と過ごす未来には無頓着だった。写真流出、メール暴露、行為の盗撮ばかりを気にして数年なにもしなかった自分も問題だが。まぁ、ゆっくりやるさと言いつつ……眠れなかったの。
2017.3.1 晴れ
三月。先月は色々あった。好きな男に優しくされて、好きな女とも向き合えた。渇きのような感情を感じ、男の優しさの先にあるもっと苦くて甘い「取り返しのつかない何か」をかじりたくなった。週刊誌を騒がせるような不貞ではないことをここに記す。いつもそうだ。私は自分から口説くし誘う。駆け引きするうちにくたばるのは御免だ。そもそも駆け引きなど出来ない。体の価値もああでもないこうでもないと勿体つけて上がるもんかと見限っている。服も自分で脱ぐ。
2017.4.29 晴れ
新緑を味わう。国がたたえる施設というのは、やはりたたえられるだけあって気持ちを穏やかにする要素が満載だった。明るい陽射し、深い緑、のっそりと泳ぐ鯉までもが緩やかな時を演出して見せているように感じる。国のものであるこの施設で泳ぐ鯉なので、恐らく公務員と同様の待遇を受けているに違いない。誰と言ったのかを気にする者もいるかと思われるので、ここは隠さず言っておく。好いた相手と行ったのだ。私は、この男が好きなのだろう。
2017.5.13 雨→曇り
肌寒い。雨なので外出も億劫だが、男に差し入れを頼まれていたのでおめおめと出掛ける。強い雨天時はタクシーの使用を自分に許している。作った弁当を食べさせていると、黙々とにぎり飯を頬張る男の肩がいつも以上に華奢に見えた。疲れているのか、追い詰められているのか。ポツリポツリと仕事の話をしていたが、嚥下する喉元ばかり見ていたのは気づかれなかっただろうか。一緒にいるなら私より生活能力も経済力もないほうがいいが、この男はどうだ。
2017.7.10 晴れ
男は高い専門知識と技術が必要な職についていた。誰でも仕事をする上では「専門的な知識や技術」が必要なのだが、その男はとりわけ代わりがいない仕事をしているようだった。私のような掃いて捨てるほど代わりがいるタレントにはうらやましい環境。こちらはお陰様で低俗なゴミクズババアと言われ続けて七年が経過しようとしている。「何ができるの」と聞かれ続けても「申し訳ない」としか返し続けられない。しかしまだここにいる。男はそれが羨ましいといってくれた。
2017.10.23 晴れ
台風が過ぎ去ってから、そそくさと男のために雨用スニーカーなるものを注文した。タイミングが悪いと思われても、台風のなか配達もままならぬ環境だと知っていながら、お急ぎで持ってきてほしい…などというのは、自分が配達員だったら悲しくなるので言わなかった。だから次の雨や荒れた天気に備えてプレゼントする運びになった。私とお揃いだというと、男は照れ臭そうに笑った。体のわりに手足が大きいので、服は貸せても靴だけはなかなか難しかったのだ。