War Is Over

 if you want it

Rough Life

今月は、徳田秋声『あらくれ』と『仮想人物』を読んだ。徳田秋声著作権が切れているので、無料で電子書籍をダウンロードできる。だが、『あらくれ』は最近、岩波文庫から新刊で出て、解説を佐伯一麦が書いているので、それを買って読んだ。やはりkindleよりも紙書籍で読んだ方がしっくりくる。

『あらくれ』は明治大正期の、運命に翻弄される哀れな女性の一代記で、現代の観点から見れば非道な人権無視のオンパレードとしか言いようがないのだが、当時はこれがありのままの庶民の暮らしだったのであろう。〈お島〉が持ち前の強い気性で厳しい運命に抗おうと必死で生き抜いていく様子がさらに哀れを誘う。それにつけても感心するのが徳田秋声の文章の巧さである。川端康成が絶賛したのも頷けるし、文学的な文章とはこういうものをいうのだなと思う。

『あらくれ』は成瀬巳喜男監督、高峰秀子主演で映画化されていて(1957年)、こちらもAmazonのネット配信レンタルで見た。小説とは別物だが、これはこれで良い。なんといっても高峰秀子が素晴らしい。そういうわけで今度は高峰秀子の名高い自叙伝『わたしの渡世日記』を買って読む。これまた圧倒的な傑作。徳田秋声の文章を小説の文章の最高峰の一つとすれば、高峰秀子のはエッセイの文章の最高峰の一つではないか。

『わたしの渡世日記』の解説は沢木耕太郎が書いている。『あらくれ』の解説を佐伯一麦が書き、『わたしの渡世日記』の解説を沢木耕太郎が書くというのは、とても正しいことのように思われてうれしい。そして、佐伯一麦による『あらくれ』解説の中には、高峰秀子の主演した映画についてのことも出てくる。

自分は、『浮雲』のゆき子よりも、『あらくれ』のお島を演じる凸さんの方が好きだ。