伊藤重夫『踊るミシン 2022Final』を買って読む。八十年代の伝説的音楽青春マンガが支持者たちの熱い支援により復刊。
これを入手するためにだけ下北沢に出かけたのだが、駅前が迷路のようで戸惑う。この猥雑さは嫌いではない。
一読したが、つげ忠男と安部慎二とわたせせいぞうの融合といった趣で、カルト漫画の名にふさわしい傑作だった。
今の時代ならもっとヘヴィーな作品になりそうな気がするが、八十年代のバブル前夜の郊外都市(神戸)の奇妙な明るさが虚無を覆い隠している。入り組んだ時系列と唐突な場面転換の連続、回収されない伏線、深読みを誘うセリフとシーンの挿入、そしてポップ・アートのような甘酸っぱい町と海の風景。マンガでしか描けないエバーエメラルドドドメ色青春物語。