INSTANT KARMA

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Gamble

昔「日本で最も歌唱力が過小評価されている歌手」と山下達郎が評したことでその実力が認知され、いまや誰もが「日本で一番歌のうまい歌手の一人」として認知している元・安全地帯のボーカリスト玉置浩二と同じように、今「日本で最も過小評価されているミュージシャンの一人」が清水翔太ではないか、とふと思う時がある。

清水翔太は一般的な知名度はそんなに高くないと思う。普通に町を歩く人たちの誰もが知っているというほどではないし、お茶の間で話題になるようなミュージシャンではない。テレビにそれほど出ないし、メディアへの露出も頻繁とはいえない。だが、知っている人には熱狂的に支持されている。ファンには〈ウェイ系〉の男女(特に女)が多いように思う。その一方で、いわゆるオタク的な音楽ファンにはそれほど受けはよくない印象である。素人にも玄人にも受けのいい藤井風のような人とは少し肌合いが違う。

ぼくが清水翔太を知ったのは、仕事上知り合ったやたら顔のいいヤンキーギャル系シンママが大ファンであるというのを聞いたからで、試しに「White」という当時の最新作を聴いたらすごくよかった。遡って全アルバムを集めて聴いた。どれもすごくよかった。以来、KPOPや藤井風と並んで自分のプレイリストには常に入っている。

(ちなみに彼女が特に大好きだと言っていた曲は、「One Last Kiss」、「Good Life」、「Impossible」、「Breathe  Again」だった。)

某ユーチューバーが先日清水翔太について「歌はうまいが心に響かない」と言っていて、それを見ながらその言葉に微かに頷いてしまっている自分がいた。

その原因が、某ユーチューバーの言うように乱れた生活を送っているから(もちろんそれが事実かどうかは不明)なのか、もっと別のところにあるのか、分からないが、彼がいい曲を書き、いいアルバムを出し、ライブでいいパフォーマンスをしているのに、その実力に見合った爆発的な評価を受けないまま現在に至っているのはなぜなのか、その謎を解くカギがどこかにありそうな気がした。でもそのカギには今どうしても手が届かない。

 

図書館で先週借りた吉本隆明の本を四冊返し、予約していた上林暁講談社文芸文庫を借りる。ついでに雑誌の棚にあった「群像」のバックナンバーも借りる。石田夏穂「ケチる貴方」という小説が書評で絶賛されているのを読んだので前から読みたいと思っていたからだ。一気に読む。確かに面白い。コンビニ人間にも通じる、三十に差し掛かろうという微妙な年齢の女性の内面が淡々と丁寧にユーモラスに描かれているのに好感を持った。冷え性を克服する高体温ゲットの秘訣を身に着けた彼女だが、今後どうやって生きていくのだろう?