INSTANT KARMA

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弱度の強度

雑誌「ユリイカ」の高橋幸宏特集に収録された菊地成孔「最後のニューロティカをコピーするために図書館に行く。

その記事の中で言及されている香山リカ『きょうの不健康』(河出書房新社、1996)も書庫から出してもらって読む。ジャック・ラカン伝』(エリザベト・ルディネスコ、河出書房新社、2001)もついでに読む(というより眺める)。

ラカンが1963年と1971年に来日し、京都奈良の寺院仏閣に感動し、自宅の離れに日本家屋を作ったというエピソードを知る。いかにも、という感じだが、彼はフロイトの技法論」の講義を禅の教え(あらゆる体系化の拒絶)への言及から始めている。

フロイトの技法論上下」に力技で取り組む。

アンナ・フロイトメラニー・クラインとの闘い、アメリカの自我心理学との闘い、フロイト(のテキスト)への惚れ込みようの凄さ。転移、抵抗、充溢したパロール、象徴的関係の導入。なんとか自分なりの言葉で説明できるくらいに肝を掴みたいのだが。

外は晴れているが風が冷たくて寒かった。

妻が目が翳むというので眼科に行ったが、加齢によるもので眼底出血やら網膜剥離などの病的な変化ではないとのこと。老化で硝子体に濁りが出て、網膜に影をつくっているということらしい。幸い焦点の部分ではないので読書に影響はないらしいが、視界にすりガラス様のボケがあるとか。こっちも他人事ではない。

強度、強度が求められるファシズム的社会で、「弱度」のよさを表現できた高橋幸宏のような人はもう現れないだろう、と菊地は上記の記事で書いているが、今はもう「弱度」どころか「喪とメランコリー」の時代に入りつつあり、今年の初めに亡くなったのは象徴的な出来事だと思った。

昨日発表のあった芥川賞は、二作同時受賞で、報道などによればどちらも地に足の着いたリアリズム小説のようなので、文芸春秋を買って読もうと思う。